福岡労働局へ家宅捜索に入る福岡県警の捜査員=26日午前9時19分、福岡市博多区、日吉健吾撮影
クレーンの製造許可をめぐり福岡労働局職員が逮捕された汚職事件で、許可を得る便宜を受けたとされる業者が、実際にはこの許可でつくれる規模のクレーンを製造していなかったことが、捜査関係者への取材でわかった。福岡県警は、業者が労働局の「お墨付き」を得て業界内に誇示する狙いがあったとみている。
福岡労働局主任を逮捕 業者に便宜、謝礼受け取った疑い
県警は26日午前、福岡労働局など関係先数カ所に家宅捜索に入った。
収賄容疑で逮捕されたのは、福岡労働局安全課の主任地方産業安全専門官、安藤和久容疑者(59)。2014年夏、船舶製造会社「エスエム鉄工」(北九州市門司区)の移動式クレーンの製造許可が下りるよう審査担当者らに助言。謝礼として、同社取締役の藤本建也(たつや)容疑者(76)=贈賄容疑で逮捕=から30万円分の商品券を受け取った疑いがある。
県警によると、同社はつり上げ重量400トンの大型クレーンの製造許可を得たが、同規模のものは製造していなかった。許可は一度取得すれば失効しない。
県内のクレーン製造会社によると、許可は工場の規模や設計、製造能力の証明になるという。この会社の社長(68)は「許可証は労働局のお墨付きになる。大型の許可があれば、仕事でも有利に働く」と話した。(稲垣千駿)