朝から市内の名所に向かうバスには列が。多くが一日乗車券を買った観光客たちだ=京都市下京区
京都市内の主な観光地を結ぶバスが乗り放題となる「一日乗車券」について、京都市交通局は現在の500円から値上げする検討に入った。外国人観光客の増加で「超人気商品」となったが、車内は混み合い、運行の遅れも目立つ。同市は地下鉄も使える一日乗車券の方は値下げして地下鉄の利用を促し、混雑の解消につなげたい考えだ。
一日乗車券は1995年、600円で販売を開始した。翌年の運賃改定で700円に値上げしたが、規制緩和で民間バスが増えた2000年、500円に値下げし、以降は据え置いてきた。民間の「京都バス」にも乗れるようにし、乗り放題区間も徐々に拡大。主なエリアの市バス運賃は大人230円均一で、3回乗れば元が取れるお得さだ。
00年度に約100万枚だった発売枚数は、10年度に364万枚、15年度には614万枚と急増している。人気を牽引(けんいん)するのが外国人観光客だ。東京都発行の都バス一日乗車券(500円)の15年度の発売枚数(127万枚)などと比べても突出した「記録的ヒット商品」(市交通局幹部)となった。
一方、特に観光シーズンは人気エリアを中心にバスの混雑ぶりが目に付く。大きなスーツケースなどを持ち込む外国人の団体客もいて、「身動きがとれず乗り降りもままならない」という不満、「便数を増やして」といった市民の要望が相次ぐようになった。
市は一日乗車券を100円~200円程度、値上げする一方、地下鉄にも乗れる「京都観光一日乗車券」を現在の1200円からより手頃にし、観光客を地下鉄に呼び込みつつ、バスの混雑緩和を図る考えだ。6月初めに識者を交えた懇話会を立ち上げて額を検討し、今年度中にバス一日乗車券の値上げに踏み切りたいという。
香港から訪れた大学生ウォン・カー・ウィンさん(21)は「アルバイトでお金をためて京都に来た。私のような観光客にとっては便利なカード。値上げ? あまり高くなるのは困りますねえ」。値上げ議論の行方を心配する。(佐藤秀男)