多くのペットショップは通常、ペットオークション(競り市)で子犬や子猫を仕入れている
日本では繁殖から小売りまでの流通過程で約2万5千匹もの犬猫が死んでいる。なぜこれほどの数の犬猫が死ぬのか。朝日新聞はある大手ペットショップチェーンが作成した、仕入れた子犬・子猫の死亡リストを入手した。獣医師らの協力で分析すると、ペット流通にひそむ問題が浮かび上がってきた。
入手したのは、全国で約130店を展開する大手ペット店チェーン(本社は埼玉県内)が作成した、22カ月分(2015年4月~17年1月)の死亡リスト。同社が仕入れた子犬・子猫のうち死んだものが月ごとに記されており、社内では「D犬リスト」と呼ばれているという。
月によって若干の違いはあるが、死んだ子犬・子猫について、展示販売していた店舗名▽仕入れ日▽仕入れたペットオークション(競り市)▽種別▽性別▽病状や治療経過、などが記入されている。
15年10月以降のリストには仕入れ数に占める死亡数の割合「D犬率」も示されており、割合が最も高かったのは230匹が死んだ16年8月で6・0%。月平均は3・6%だった。
これらのリストを公益財団法人動物臨床医学研究所の獣医師らに分析してもらった。すると「下痢・嘔吐(おうと)」や「食欲不振」が死につながっていると見られるケースが目立った。D犬率が最高だった16年8月では66匹が「下痢・嘔吐」、61匹が「食欲不振」の症状を見せていた。
感染症が広まっている状況も見て取れた。月によって傾向はかわるが、たとえば15年4月は、死んだ子犬84匹のうち42匹が「パルボウイルス感染症」と見られる症状を発症。また16年8月に死んだ子犬189匹については「ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)」が疑われる症状が17匹で見られた。猫では「猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)」や「猫伝染性腹膜炎(FIP)」と見られる症例が冬の期間に目立った。
同研究所理事長で獣医師の山根義久さんは「明らかに感染症にかかっているとわかる症状がこれだけ出ているのには驚いた。繁殖と流通の段階で衛生管理が行き届いていないのではないか」と指摘する。
一方で、同社で子犬・子猫の健康管理に携わっている獣医師はこう証言する。
「必死に治療をしているが、店舗に入ってくる段階で既に状態が悪すぎる子が多いのが現実。私たちとしては、繁殖業者の段階で健康管理を徹底してもらいたいと思っている」
山根さんはさらに、特に暑さや…