主な選手の高校通算本塁打数
高校球界の強打者として注目される早稲田実(東京)3年の清宮幸太郎選手(18)が4日、高校通算100本塁打を打った。歴代2番目に多いとされるが、「高校通算本塁打」とはどんな記録なのか。
早実・清宮、高校通算100号達成 第4打席に場外弾
100本目「自分らしいいい打球」 早実・清宮一問一答
大勢の報道陣が詰めかけるなか、100号は愛知県の小牧市民球場(中堅120メートル、両翼92メートル)の右中間場外に消えていった。清宮選手は「自分らしい良い打球が飛んでくれてよかった。すごいことなのか、あまり実感はないです」と照れた。
高校生の通算本塁打数とは、公式戦と練習試合を合わせた本数になっている。チームのスコアブックで確認できる場合もあれば、記者の取材に選手自身が答えたものもあり、各都道府県の高校野球連盟が把握する公式の記録ではない。清宮選手は公式戦では通算48試合で23本塁打。ほぼ2試合に1本という高い確率だ。
メディアが本数を数え始めたのは1980年代の「KKコンビ」が始まりとも言われる。PL学園(大阪)の清原和博選手が甲子園で計13本塁打し、桑田真澄選手が計20勝を挙げた。雑誌「報知高校野球」は2人の引退直後に練習試合を含めた3年間の全成績を掲載。その後、星稜(石川)の松井秀喜選手ら強打者が出るたびに通算本塁打数が報じられるようになった。
一方、プロのスカウトは本数を目安程度にしか見ていない。学校によって試合数や相手投手のレベル、球場の広さも様々。強豪校では上級生に優れた選手がいて下級生は出られないなど、環境差もある。「無名校の60本より強豪校の30本」と言うスカウトもいる。
実際、清宮選手の実力はどれほどなのか。小学生でリトルリーグの世界選手権で優勝し、米メディアに「和製ベーブ・ルース」と騒がれた。高校入学直後から3番を打ち、1年夏の甲子園で2本塁打。筋力トレーニングでパワーもつき、現在は身長184センチ、体重101キロ。飛距離は高校生トップクラスだ。
プロ野球広島の苑田(そのだ)聡彦スカウト統括部長は「普通の高校生は一つのタイミングだけで打つが、清宮君は相手によって微調整できる。バットコントロールも柔らかい。打つことに関しては言うことがない」。ヤクルトの小川淳司シニアディレクターは「本数は目安と言っても100本はなかなか打てない。本塁打は魅力。それでファンを呼べることはすごいよ」と話す。
本塁打数を積み重ねるにつれて、人気は「フィーバー」と言われるほど高まってきた。
4月の春季東京都大会。都高校野球連盟は「混雑緩和と観客の安全確保」を理由に、決勝の会場と日時を変更する異例の決定をした。約5600人収容の神宮第二球場から約3万2千人収容の神宮球場に移し、ナイターに。早稲田実と日大三との決勝は約2万人が詰めかけ、清宮選手は2打席連続本塁打を放った。5月の茨城県での関東大会でも早稲田実の試合会場が変更された。
早稲田実は各地で招待試合に臨んでいる。清宮選手を目当てにした徹夜組の観客が出たこともあった。熊本県での招待試合では選抜大会4強の秀岳館と対戦。秀岳館はあと1アウトで勝利という場面で、あえて敬遠の四球で打者を出塁させ、次打者の清宮選手との勝負を選んだ。
来月、甲子園出場をかけた西東京大会が始まる。都高野連は「組み合わせ次第では、早稲田実の試合は全て神宮球場で行うということも考えなければいけない」と構える。最後の夏、本塁打数をどこまで増やすのか。清宮選手は「打てるだけって感じですかね。頑張ります」とはにかんで答えた。(坂名信行、辻健治)