福岡市博多区で7億5千万円相当の金塊が盗まれた事件で、窃盗容疑で逮捕された容疑者らが、金塊取引の情報提供者から「密輸した金塊だから、盗んでも被害届は出されない」と持ちかけられていたことが、捜査関係者への取材でわかった。事件後、容疑者らはこの人物と連絡が取れなくなったといい、福岡・愛知両県警も所在を調べている。
捜査関係者によると、窃盗容疑で逮捕された7人の容疑者らは、事件当日に金塊が運搬されるとの情報を、情報提供者の男性らを通じて入手。7人のうち自称自営業の中垣龍一郎容疑者(40)=愛知県日進市=が男性側と連絡を取り合う立場で、やりとりの中で「密輸品なので被害者は通報しない。被害届も出せない」などと言われた。
事件を主導したとみられる会社役員の野口和樹容疑者(42)=名古屋市千種区=らはこの話を受け、金塊を無理やり奪うことを計画。だが事前に現場の博多駅周辺を下見したところ、人通りが多いエリアだったため、警察官の格好で職務質問のふりをして金塊を盗む作戦に変更したという。
事件後、男性側には中垣容疑者を通じ、情報提供料として一定の報酬が支払われたと両県警はみている。
一方、金塊を盗まれた被害者側は警察に被害届を提出した。しばらく後にそのことを知った野口容疑者らは情報提供者側に連絡しようとしたが、連絡がつかなくなっていたという。金塊が密輸品だったかどうかははっきりしていない。(菅原普)