ブルーカード(右)とブルカ券の見本。ブルカ券は加盟店で商品券として使える
長野県民の4人に1人が持っている「長野最強」のポイントカードが今年、発行開始から30年を迎えた。ブルーカード、通称ブルカ。地域に愛される信州生まれのアイデアは今、全国へも広がっている。
「生活の中にはいつもブルカがあります」。食品を買うときもカラオケに行くときも、信濃町の主婦小川彩音さん(25)は、ついブルカが使える店に足が向く。「ポイントをためるのは楽しいし、商品券も待ち遠しい」
ブルカは、主に県内にある500弱の加盟店ならどこでも使える共通のポイントカードだ。1業種1社というルールのもと、百貨店からガソリンスタンド、レストラン、タクシーなど多岐にわたる。入会金300円で発行され、年会費は無料。有効期限もない。
買い物をする際に提示すると代金の1%(食品・ガソリンは0・7%)分のポイントがつく。たまったポイントは年2回、500ポイントごとに500円の共通商品券「ブルカ券」となって、利用者に郵送される仕組みだ。有効会員数は5月時点で56万4千人。99%が県内在住者で、県内全世帯の半数に普及しているとする調査もある。
発行開始は1987年3月。「全国チェーン店に対抗するため、長野生まれの企業が手を組んだのが誕生のきっかけでした」。ブルカを発行・管理する「信州コミュニケーションズ」(長野市)の小宮山恵子さんがおしえてくれた。利用者に還元されるブルカ券は年間約130万枚、6億5千万円分。言い換えれば、650億円近くが県内で「地産地消」されていることになる。
加盟店側にとっては、少ない投資で大きな顧客情報を得ることができるのがメリットだ。ブルカを活用した独自キャンペーンを行う店も増えてきた。ホームセンター「綿半ホームエイド」(同)では、空き缶や古紙などを持ち込むと量に応じてポイントがたまる装置が好評という。15年前から加盟する「ながの東急百貨店」(同)の畔上友成統括マネジャーは「クーポン券などで販促にも活用している」と話す。
とはいえ、ブルカの普及は順風満帆ではなかった。発行を始めた当初は利用者も加盟店も伸び悩んだ。「Tカード」など今では当たり前となったポイントカードの浸透が追い風になったという。
なぜ長野で成功したのか。小宮山さんは「山で囲まれ、買い物で県外へ出にくい地理が要因でしょうか。地元企業の成長とともにブルカも大きくなれた。買い物カードという枠を超えて、県民カードと呼ばれることが目標です」。
ブルカをならった同様のサービスは、愛媛や新潟で始まっており、兵庫や札幌でも準備が進んでいる。(津田六平)