「X国からの弾道ミサイル」を想定した訓練。グラウンドゴルフ大会の参加者らが体育館に避難した=11日午前10時2分、広島県福山市の市立新涯小学校、左古将規撮影
北朝鮮の弾道ミサイル発射が相次ぐ中、全国の自治体で避難訓練や注意喚起の動きが広がる。号令をかける内閣官房は「国民の不安感が今までになく高まっている」と必要性を訴えるが、「かえって不安をあおる」と戸惑う声も上がる。
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特集:北朝鮮のミサイル
■回覧板で市民に呼びかけ…
11日午前10時、広島県福山市のラジオ局「エフエムふくやま」が通常の番組を中断し、「プ、プゥーッ」と不協和音のサイレン音を鳴らした。
「訓練です。午前10時ごろ、X国からミサイルが中国地方の方向に発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難してください」
福山市が事前に町内会の回覧板などで市民に呼びかけ、エフエムふくやまに協力を依頼した避難訓練だ。
JR福山駅から南東へ2キロ余り。瀬戸内海にほど近い市立新涯(しんがい)小学校では、グラウンドゴルフ大会に参加していた住民約150人が市職員らに促され、校庭から体育館に逃げ込んだ。高齢者が多く足取りはゆったりだが、4分ほどで避難は完了。地区ごとの点呼で無事を確認した。
市の要請を受けて訓練に協力した地元町内会連合会の倉田秀孝会長(73)は「この地区にミサイルが飛んでくる可能性は低いと思うが、こうした訓練を重ねれば、津波が来た時にも役立つと思う」と話した。
「X国からのミサイル」を想定した訓練は各地で相次ぐ。内閣官房が号令をかけた。4月21日、都道府県の担当者を集めた説明会で、訓練の必要性を訴えた。5~6月にかけて青森、山形、山口、福岡の各県であり、12日も新潟県燕市で実施。7月には富山で予定する。安倍晋三首相も3月の衆院本会議で「自治体に訓練の積極的な実施を働きかける」と述べた。
ミサイルが日本に落ちる恐れがある場合、「全国瞬時警報システム(Jアラート)」が作動し、防災無線や携帯電話の緊急速報メールで情報を伝える。政府は過去のデータから「発射から10分以内に到達する可能性がある」とみる。内閣官房の担当者は「限られた時間で身を守るため、少しでもできることを、国民に知ってほしい」と話す。
ただ、訓練を実施した自治体はまだ少数派。近畿のある自治体の担当者は「どんな訓練が効果的か分からないのに、やみくもに動いても仕方ない。情報収集の段階だ」と語った。