今は転職先で働く男性。トラックには乗り続けている=柴田悠貴撮影(背景の一部にぼかしを入れています)
「クロネコヤマト」の宅配現場で常態化していた違法残業の実態を「告発」し、ヤマトが全社的な未払い残業代の調査に乗り出すきっかけをつくった元ドライバーの男性がいる。「会社を動かした」「未払い残業代を取り戻せた」――。現役のドライバーから感謝の声が上がるが、本人の表情は晴れない。現役社員から伝えられる職場の雰囲気が、以前と変わっていないように感じるからだ。
「現場は本当に苦しんでいます」。昨年11月、ヤマト運輸の横浜市の営業所でセールスドライバー(SD)をしていた30代の男性が厚生労働省で記者会見を開き、職場で常態化する長時間労働と残業代未払いの実態を「告発」した。
男性は昨秋に退社。30代の元同僚とともに、地元の労働基準監督署にも違法な労働実態を伝えていた。
2人はヤマトで10年以上SDとして働いた。「入社した頃は、昼休みに営業所仲間で野球ができた」と男性は振り返る。だが、インターネット通販大手アマゾンの荷物の取り扱いが始まった2013年以降、昼休みを削らないと間に合わないほど荷物量が増えた。
高校時代は、それぞれ陸上部と野球部のキャプテン。体を動かすのは得意だが、朝から走り回っても配り切れなくなった。再配達になる荷物を少しでも減らそうと、午前中からマンションの宅配ボックスを同業他社と奪い合った。
受け取り手との関係も変わった。男性によると、配達時間の終了5分前に電話が鳴り、「今すぐ再配達しないなら、もう受け取らない。そっちで処分して」などと言う客が出てきた。
夜中に帰宅しても、「明日は配…