ペット霊園の跡地で愛犬を思い、手を合わせる河野祐紀子さん(左)と次男=大阪府枚方市、長富由希子撮影
全国各地に広がりをみせるペット霊園。ただ、これまで設置などをめぐってトラブルも起きてきた。関連する国の法律はなく、規制は自治体任せの状態だ。条例などを整備した自治体は昨年4月時点で159で、10年間で3倍以上に増えてはいるが、規制がない自治体では突然の閉園で遺骨が放置される事態も起きている。
大阪府北東部、枚方市の郊外にペット霊園「宝塔」の跡地がある。「コロ、家に帰っておいで」。5月下旬に訪れた同府寝屋川市の会社員河野祐紀子さん(50)は、3年前に死んだメスのシバイヌに心の中で呼びかけた。霊園は連絡もなく閉園し、1千坪あるとうたっていた敷地内には多数の墓石や遺骨が山積みに。コロの遺骨がどれかわからなくなっていた。
「息子が不良にならなかったのはコロのおかげ」。学生だった2人の息子が夜遊びに行こうとすると、悲しそうに遠ぼえして足を止めさせた。最期の1年は寝たきりで、河野さんと息子が交代で世話をした。「コロは私たちにとっては娘。閉園を教えて欲しかった」と河野さんは涙ぐむ。
関係者らによると、霊園の元経営者は「陶器を作るため」と土地を借りたが、無断で20年以上前にペット霊園を開園。異臭がするとして営業をやめるよう求められたが応じずに提訴され、2013年に墓の撤去などを条件に和解が成立、閉園へとつながった。元経営者は「霊園にはペットが1万体ほど眠っていた。本当に申し訳ない」と話すが、撤去をまだ終えられずにいる。
ペットを埋葬した人たちは複数の会をつくり、市内の別の霊園に遺骨を移す検討もしている。13家族が入る「宝塔遺族の会」の北脇武代表は「行政はあてにならず、遺族が動く必要があった」と話す。
枚方市に聞くと、動物愛護法に基づき犬や猫を担当する市保健衛生課は「生きている犬猫が担当なので担当外」。動物の死体は法律上は廃棄物だが、市環境総務課は「霊園が扱う動物の死体は廃棄物ではない、と国の通知があるので担当外」と説明する。伏見隆市長は「問題が起きないように何らかのルールが必要」と条例の制定も視野に検討を始めている。