法科大学院教授や裁判官らが委員を務める法制審会社法制部会の第3回会議=21日、東京都千代田区、荻原千明撮影
会社と株主の対話ともいわれる株主提案をめぐり、法相の諮問機関「法制審議会」の会社法制部会で、議案の数や内容の制限が検討されている。権利乱用とみられるケースがあるのが背景だが、「会社の意に沿わない提案を拒まれることにならないか」と不安の声を上げる株主もいる。
「オフィス内の便器はすべて和式とし、足腰を鍛錬し、株価4桁を目指して日々ふんばる旨定款に明記する」「取締役の社内での呼称は『クリスタル役』とし、代表取締役社長は代表クリスタル役社長と呼ぶ旨定款に定める」――。
野村ホールディングス(東京)の5年前の株主総会で、ある株主が提案した議案が諮られた。元々の提案は100あったが、うちこれら18議案が総会に付議され、全て否決された。
昨年1月~今年3月に公益社団法人「商事法務研究会」(同)が開いた会社法研究会で、この事例が「乱用的」と取り上げられた。法務省職員も研究会メンバーで、株主提案権の制限がいるかどうかなどが検討された。
大量提案への会社の対応をめぐって訴訟になった例にも触れた。光学機器メーカーのHOYA(同)の2008~10年の株主総会で、ある株主が一度に最大114議案を提案しようとし、招集通知への記載などを請求。同社側は削減を求めたり、記載しなかったりした。株主は「株主提案権を侵害された」と損害賠償を求めて提訴。東京地裁は同社側に3万3千円の支払いを命じたが、二審の東京高裁は「権利の乱用に当たる」などと請求を退け、最高裁で確定した。
同社コーポレート企画室の担当者は「海外投資家から『理解に苦しむ』との声もあった。株式発行会社としては、規制があった方がいいと思う」と話す。