高校野球について熱く語るトータルテンボスの藤田憲右さん=角野貴之撮影
第99回全国高校野球選手権の地方大会が、今年も全国で始まった。高校野球大好き芸人として知られるトータルテンボスの藤田憲右(けんすけ)さん(41)が、地方大会の魅力について、熱く語った。
渡部・ザキヤマの高校野球研究部
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甲子園の全国大会も好きですけど、地方大会決勝が一番好き。だって、全国大会は「選手全員、甲子園出れてるやん」ってところがあるじゃないですか。
だから、高校野球のテレビ番組でも、全国大会を扱う「熱闘甲子園」より、地方大会の「速報! 甲子園への道」(どちらも朝日放送)の方が好きなんです。
甲子園もドラマはあるけれど、もっと涙が出てくるのって、地方大会で負けた選手だと思うんです。こっちの方が選手のつらさが重い。甲子園に行けないんですから。
印象に残る決勝は、2014年の石川大会、星稜が九回裏に9点を取って小松大谷にサヨナラ勝ちした試合です。
攻める側はイケイケになって、潜在能力以上の力が出せる。守る側は勢いにのまれて、一気に押し切られちゃう。今の高校生は技術が高くなってきているけど、まだまだ「脳」は成熟していない。それは、知力とかじゃなくて、経験や考え方。だから、なすすべなくやられちゃう時がある。プロでは絶対起きない試合だし、高校野球のすべてが凝縮された試合だと思います。
僕も球児でした。高3の夏は、静岡大会で2勝して、完全燃焼でした。負けた後に、東東京大会決勝の修徳―関東一をたまたまテレビで見たんです。「いいなぁ、うらやましいなぁ。まだ野球がやれるんだ」って。まぶしかった。
今は、新興私学が台頭している都道府県もあれば、四国のように公立校が強いところもあります。地元の方も公立校をすごく愛していて、「公立から甲子園に行くのがかっこいい」と思っている。県民性があるのが面白いですよね。毎年注目しているのは徳島大会。1度も私学が甲子園に出ていないんです。
地方大会の決勝を見ると、毎年、初出場をかけて出てくる高校がある。その決勝を見られるって言うのは、歴史の証人になれるチャンスですよね。
何度も決勝まで進むけど壁を破れない学校なのか、はたまた決勝進出自体が初めてなのか。そんな下調べをして決勝を見たら、より感情移入ができて、楽しいです。(聞き手・石川達也)
■藤田さんの記憶に残る地方大会決勝
・2016年 岡山大会 創志学園4―1玉野光南
九回、投ゴロ併殺で試合終了かと思われたが自打球でファウルの判定。そこから創志が逆転。
・2014年 石川大会 星稜9―8小松大谷
0―8で迎えた九回に星稜が打者13人の猛攻で9点を奪ってサヨナラ勝ち。
・2013年 広島大会 瀬戸内1―0広島新庄
0―0で延長15回を引き分けての再試合。山岡泰輔と田口麗斗の両エースはともにプロ入り。
・2004年 大阪大会 PL学園13―7大阪桐蔭
4―4で延長15回を引き分けての再試合。PL学園が3本塁打の長打攻勢で制した。
・1993年 東東京大会 修徳7―6関東一
藤田さんが高3だった年。元巨人の高橋尚成がエースを務める修徳が逆転勝ち。
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<ふじた・けんすけ> 1975年生まれ。静岡県出身。小山高3年時には、エースとして2試合連続完封勝利を挙げる。97年に大村朋宏さんとお笑いコンビ「トータルテンボス」を結成。豊富な高校野球の知識でスポーツ番組などの解説もしている。著書に「ハンパねぇ!高校野球」(小学館よしもと新書)。