事故が起きた車両と同型の自動昇降リフト。事故時はチェーンはついていなかった
愛知県東郷町の特別養護老人ホームで6月、入所者の60代男性が「出張理美容」の専用トラックに乗り込む際、自動昇降リフトから車椅子ごと転落し、その後、死亡する事故が起きていたことが県警への取材でわかった。県警は、出張理美容業者の安全対策が不十分だった可能性もあるとみて、業務上過失致死の疑いで慎重に捜査している。
県警によると、男性は6月19日午後3時ごろ、30代の男性理容師の付き添いで、女性入所者と一緒にリフトに乗った。上昇中に車内に乗り移ろうとした女性を止めようと、理容師が車椅子から手を離したところ、男性は後ろ向きに転落して後頭部を強打。7月6日未明に病院で亡くなった。リフトの床の高さは路面から約70センチで、車椅子の車輪のストッパーはかかっていなかった疑いがあるという。
業者によると、車輪が回らないようにストッパーをかける決まりだった。一方、リフトと車椅子をつないで固定する器具はなかったという。また、車椅子を乗せる場合、リフトの定員は付き添いの理美容師とあわせて2人だった。当時3人が乗っていたことについて、業者の幹部は取材に「上昇が始まる際に突然女性が乗ってきた」と説明した。
業者は事故後、リフトの床の車輪止めを使ったり、転落防止のチェーンをつけたりしたという。業者の幹部は「こうした事故が二度と起きないよう、再発防止に努めている」と話した。(松本龍三郎)