開閉会式が開かれる平昌五輪プラザ。観覧席の設置はほぼ終わっているが、五輪後に撤去するため、簡易な構造になっている=1日、韓国江原道・平昌、武田肇撮影
来年2月9日に開会式がある平昌(ピョンチャン)冬季五輪まであと半年。施設や交通機関の準備はめどが立った。韓国民の関心は少しずつ上向いているものの、国内外へのPRに懸命だ。北朝鮮の参加も成否の鍵となる。
特集:2018平昌オリンピック
1日、スキーやそり競技会場の最寄り駅「珍富(チンブ)駅」の建設現場が海外メディアに初公開された。「五輪の歴史を作ることができて誇らしい」。現場責任者の申東善(シンドンソン)さん(67)は胸を張った。試運転を経て12月に開通予定。高速列車でソウルと58分で結ばれる。
着工から5年余りの突貫工事。五輪のために新設された高速鉄道は五輪の成否のカギを握ると言われていた。車で約3時間のソウルと五輪会場が日帰り圏内になり、宿泊施設の不足問題の解決にもつながるからだ。
競技場なども今秋にはすべて完成する。ただ、開閉会式会場は、大会後に観客席が撤去できるよう屋根なし。平均気温が零下5度になる2月に防寒対策をどうするかなど、課題の解決はこれからだ。
ここに来て国民の意識も変化し始めている。
金姸児(キムヨナ)、スキー、フィギュアスケート、チェ・スンシル――。3月、五輪を所管する文化体育観光省が国民を対象に行った世論調査で「平昌五輪のイメージ」の4番目に前大統領の朴槿恵(パククネ)被告の支援者、チェ・スンシル被告の名前が挙がった。朴前大統領の弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)につながった一連の疑惑で、チェ被告が五輪の利権を狙っていたことが明るみに出たからだ。今年初めには、文化体育観光相が不正に関与したとして逮捕。大会関係者には「このままでは国民に歓迎されない五輪になる」との危機感が広がっていた。
5月に就任した文在寅(ムンジェイン)大統領は、五輪を国民のための「癒やしの大会」にするとして、立て直しを宣言。開幕200日となった7月24日には歴代大統領で初めて五輪広報大使を引き受け、国を挙げてのPR活動に取り組み始めた。国会は追加予算450億ウォン(約45億円)を承認。7月の世論調査では「五輪が成功する」と回答する人が過去最高の63・8%に達した。
ただ、五輪のために投じられた予算はインフラ整備を含めて約13兆ウォン(約1兆3千億円)で、五輪誘致時の見通しより4兆2千億ウォン(約4200億円)膨らんだ。1日に記者会見した李熙範(イヒボム)・大会組織委員長は企業からの協賛金も「3千億ウォン(約300億円)不足している」と明らかにした。
その上で、収益の柱となるチケット販売で「最も重要な国」として日本と中国を挙げた。両国とも近いうえ、2020年の東京夏季、22年の北京冬季と東アジアで五輪が続くからだ。
それぞれの訪韓客は、慰安婦問題や米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備をめぐる問題の影響で減少傾向にある。李委員長は「スポーツは政治を超える」「平昌五輪を韓中日3カ国がさらに近づく契機にしたい」と強調するが、五輪の成否には外交関係の影響も無視できない。(平昌=武田肇)