社旗がついた始球式用のボールを投下する朝日新聞社のヘリコプター「あかつき」=兵庫県西宮市
熱戦が続く夏の甲子園。8日の開幕試合では、スポーツキャスターの長島三奈さんが始球式をしたが、今年も朝日新聞のヘリコプターが投下したボールが使われた。
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整列後にグラウンドに散った選手たちが見守る中、スコアボード後方にヘリコプター「あかつき」が姿を現した。地上から150メートルほどまで高度を下げ、球場の上を通り過ぎようとした瞬間、機体右側の開いたドアから、ボールをひもでくくり付けた朝日新聞の社旗が投げ落とされた。
赤と白の模様をたなびかせ、二塁ベース近くに無事着地。スタンドから拍手と歓声がわき起こった。
甲子園での「ボール投下」の歴史は古い。朝日新聞航空部によると、始まりは1923(大正12)年の第9回大会。今の阪神甲子園球場ができる前の鳴尾球場で、水上機と陸上機計8機が祝賀飛行をし、始球式のボールを投下した。終戦後しばらくは米軍機がその役割を担ったが、52年の第34回大会から本社機によるボール投下が再開され、56年からはヘリコプターが使われるようになった。
ボール投下の合図はパイロットが出す。ヘリの飛ぶコースや速度に加え、風の向きや強さを考慮してタイミングを計る。後部座席の整備士は「投下」の合図を受け、二塁ベース後方に敷かれた目印の旗を目がけて投げる。
甲子園ほど大きな球場でも、通り過ぎるまで5秒もかからない。内野席を覆う銀傘やナイター照明といった大きな障害物もある。過去には地方大会で風に流されて場外に落ちたこともあったが、本大会での失敗は「少なくとも近年は記憶にない」と関係者。それだけに大きな緊張を伴う作業になる。
投げた旗がすぐに開いて、すーっと流れるように落ちるのが理想だ。そのため、旗のたたみ方にもコツがあり、担当する整備士は先輩たちから教わったやり方に自分なりのアレンジを加えて準備をする。旗にひもが絡みついたり、機体に当たったりしないよう、持ち方や投げ方にも注意が必要だという。
そして迎えた本番。今春に導入されたばかりの「あかつき」が甲子園の祝賀飛行に初登場。朝日放送のヘリコプターが並んで飛行しながら空撮し、球場の大型スクリーンにその模様が映し出された。
担当した整備士の金谷尚紀さん(41)は7年前に続いて2度目の大役だった。「投げた直後、社旗がきれいに開くのが見えた。運良く目標近くに落ち、無事成功して一安心です」と胸をなで下ろした。パイロットの田中章さん(51)は「グラウンドに届けば良しと、無欲で狙った。中央に落下したのは偶然です」とコメントした。