事件からの10年間を振り返る、磯谷富美子さん。自宅の一角には利恵さんの写真が並ぶ=名古屋市千種区
名古屋市千種区で2007年8月、インターネットで知り合ったばかりの男3人が会社員磯谷利恵さん(当時31)を路上で拉致し、その後殺害した「闇サイト殺人事件」。24日で発生から10年を迎える。「死を無駄にしたくない」「殺され損で終わらせない」。一人娘を失った母・富美子さん(66)はそんな思いから、犯罪被害者遺族として経験を語り続けている。
あの夜、帰宅途中だった娘は、自宅からわずか約100メートルのところで見知らぬ男たちに連れ去られた。粘着テープで口と鼻をふさがれ、ハンマーで何度も頭を殴られた上、ロープで首を絞められて窒息死した。金目当ての犯行だった。遺体はひとけの無い、岐阜県内の山林にうち捨てられた。
「こんな犯罪をした人たちは死刑になって当然」。富美子さんは事件後、3人の極刑を求める活動を始めた。「原動力」は怒りと憎しみだった。賛同者の署名は全国から集まり、最終的に33万人を超えた。自身も法廷に立ち、強い処罰感情を訴えた。
09年。一審判決は2人が死刑、1人が無期懲役だった。だが、控訴審で高裁は死刑の1人を無期懲役に減刑した。理由について、被害者が1人であることを踏まえ「死刑選択がやむを得ないといえるほど悪質だとは断じがたい」とした。
「数の問題ではない。ここまでやってもダメなのか……」。無力感を抱く一方、こうも思った。「司法は遺族の気持ちをくんでくれると考えていた。でも、実際はそうではない。その現実を少しでも世間の人に知ってもらいたい」
事件から3年が経ったころ、犯…