週刊朝日ムック「B′(ビー・ダッシュ) B.LEAGUE×井上雄彦」
■「主役に迫る」を取材して
特集:B.LEAGUE 主役に迫る
バスケットボールのBリーグは9月末から2季目を迎える。華々しく開幕した昨年からの1年余りの間、何度うならされたことだろう。
漫画「スラムダンク」の作者・井上雄彦さんとBリーグ選手による対談企画「B.LEAGUE 主役に迫る」で、これまでに登場した選手13人との対談にすべて立ち会った。普段の取材ではなかなか本音を打ち明けてくれない彼らが、井上さんを前にすると次々に心を開いていく。なぜだろうか、と考えてみた。
井上さんは、選手がしゃべり終えるまで決して口を挟まない。ときには深くうなずき、ときには選手を食い入るように見つめ、一言も聞き漏らすまいと耳を傾けている。「僕にとってもBリーグ選手はあこがれの存在」と井上さん。選手たちへの敬意が、立ち振る舞いを通じて相手にも伝わっているように感じる。
決して多くはない口数の中には必ず、炎のように燃えさかるバスケへの情熱が込められている。
「バスケは悪くない。バスケは面白い。あとは、自分ががんばるだけだと思っていた」
バスケ漫画は成功しないと業界内で言われていた時代にあえて挑戦した、井上さんの当時の胸の内だ。田臥勇太選手(栃木)との対談で口にした。熱い言葉が向き合う相手の心を揺さぶるのだろう。田臥選手は、目を大きく見開いて応じた。「井上さんの言う通り、バスケは悪くない。自分たち選手次第。バスケを輝かせたい」
「取材者・井上雄彦」を目の当たりにし、記者16年目にして教わることばかり。現在休載中の対談企画は、9月末のBリーグ新シーズン開幕後に再開する予定だ。来季もまた、井上さんが紡ぐ、選手たちの生き生きとした言葉をかみしめたい。(清水寿之)
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過去の対談をまとめた週刊朝日ムック「B′(ビー・ダッシュ) B.LEAGUE×井上雄彦」が9月5日に発売される。井上さんの描き下ろしイラストが表紙を飾り=写真=、2季目を迎えるB1全18チームの戦力分析なども掲載。定価は千円(税込)。