八事山興正寺(名古屋市昭和区)の所有地を規則に反して売却するなどしたとして、総本山の高野山真言宗と、罷免(ひめん)された前住職が争っている問題で、名古屋地検特捜部が12日、興正寺など複数の関係先の家宅捜索を始めた。前住職からも任意で話を聴いた。関係者への取材でわかった。
問題を巡っては昨年9月、総本山側が業務上横領と背任の疑いで告訴状を名古屋地検に提出していた。
総本山側は昨年8月に記者会見を開き、前住職が2012年、総本山の了承なく寺が所有する土地約6万6千平方メートルを中京大学(同市昭和区)に売却し、売却で得た約138億円のうち、約70億円が法人や団体の業務委託費などに使われていたと指摘。「前住職の乱脈な運営は許しがたい」と批判した。これに対し、前住職の代理人弁護士は「寺への不当な干渉だ」と批判していた。
前住職は14年に罷免(ひめん)され、後任に総本山の添田隆昭宗務総長が任命されたが、現在も寺の運営は前住職が続けている。
土地売却を巡っては、名古屋国税局が15年3月期までの3年間で約6億6千万円の申告漏れを指摘し、興正寺が修正申告していたことが昨年7月に判明した。