【牙彫(象牙彫刻)】安藤緑山「胡瓜(きゅうり)」(三井記念美術館提供)
みずみずしい実をつけたキュウリ、今にも動き出しそうな伊勢エビ――。動植物や食べ物などを精緻に表現した明治の工芸作品と現代アートを対比する特別展「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」(朝日新聞社など主催)が、東京・日本橋の三井記念美術館で開かれている。監修した山下裕二・明治学院大教授は「どれを見ても理屈抜きにすごいと思える。驚くべき技術を持った職人や作家が労力と時間をかけた作品を楽しんで欲しい」と話している。
今回は2014年に開催した「超絶技巧!明治工芸の粋」の続編。前回は、海外に流出し、近年里帰りしている七宝、金工、漆工、木彫、自在、陶磁、ししゅうなど明治工芸の再評価として企画された。スーパーリアルな技とセンスが口コミやインターネットで拡散し、「超絶技巧」を美術界で流行語にした。
再び開催するに当たり、明治の技に肩を並べ、しのぐような現代アートの15人の作品も加えた。前原冬樹さんの木彫「皿に秋刀魚」は白い皿に、焼いたサンマの食べかけが載っている。驚くことに、細かい骨から皿までが一本の木から彫りだしたものという。美術館側は「骨を折らないか、展示するのがこわかった」。
明治「超絶」のスターの一人、象牙彫刻の安藤緑山は生没年が確定しておらず、墓の所在地も不明だ。山下教授は「名前より作品を残したところに感銘を受ける」という。
今回、明治の作品の大半を提供した村田理如・清水三年坂美術館長は「ぜいたく禁止令がたびたび出た江戸時代、職人は地味に見えて実は豪華という粋な作品をつくってきた。そうした技を受け継いだ明治の作品には人を驚かせたい、おもしろがらせたいという職人気質が表れている」と話している。
展覧会は12月3日まで。一般1300円など。