お気に入りの「カエルの木魚」を持つ神田佳子さん=横浜市西区のボンカンスタジオ横浜、高橋雄大撮影
スティックが何本にも見えるような超絶技巧を披露したと思えば、たった1回「ポン」とたたくだけで場の空気を変えられる。それが、プロの打楽器奏者だ。でもリズムに敏感すぎて、日常生活では絶対音感ならぬ「絶対リズム感」に振り回されることもあるとか。音にこだわるあまり、「日本有数の楽器持ち」になったパーカッショニストの神田佳子さん(47)に、実演を交えながら打楽器奏者の知られざる姿を尋ねた。
「絶対リズム感」
幼い頃から、メロディーよりリズムが気になって仕方なかった。幼稚園の時、音楽教室で鈴の係になったことがある。周りの子は「シャンシャン」と音を鳴らすのが心地よくて、どんどんリズムが速くなっていった。「それが気になって仕方なかったんです。(周りの子に)合わせないといけないけど、本当はもっとゆっくりしたリズムがいいのに、って」
リズムに意識が向くあまり、今では何でも「リズム」に聞こえて苦労することもある。「足音が『タッタッタッタ』って聞こえてきて、後ろからもう1人来てリズムが重なったりすると、ああ心地良いという時もあるし、工事現場の『カーン、カーン』っていう金属音なんてとても良いのに、途中でリズムが外れたりすると、気になって仕方がない。街を歩くと『それは違うだろう』という音が多々あって、変なリズムはやめて、って叫びたくなります」
リズム感は11歳から親しむドラムで育んだ。ボンゴやコンガといった太鼓を組み合わせ、演奏をしてもらった。高音、低音に音の大小も変えながら、2本のマレットを自在に操る。手が3本にも4本にも感じられる。「自分が出したい音を左右の手で同じように出せるようになるまで、何度も何度もたたく練習を繰り返します。チーンとかカーンとかやっているだけに見えますが、細かい技術が打楽器奏者には必要なんです」
例えば賞の発表などのときに「ドゥルルルルルル」と鳴らすドラムロール。実は2種類のやり方がある。一つはスティックが太鼓の面を打った時の反射を利用し、スティックを面に押し潰すようにして鳴らす方法。もう一つは、2度スティックを面に打つのを左右交互に繰り返していく方法だ。私も両方、試してみた。が、全く音が続いてくれない。「練習すれば、誰でもできるようになりますよ」
机も「楽器」に
東京芸術大で打楽器を専攻した…