「電話してちょうだい~♪」と竹本功一会長=大阪府堺市堺区、滝沢美穂子撮影
■「まだまだ勝手に関西遺産」
「ピアノ売ってちょーだい! 電話してちょーだい!」
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関西出身者でなくても、このフレーズを聞けば、どんなテレビCMなのか、ご存じの方は多いでしょう。
中古ピアノの買い取りで知られるタケモトピアノ(本社・堺市)のCMです。タレントの財津一郎さん(83)が電話を掛けるしぐさをしながら「美声」を響かせ、女性ダンサーが歌って踊る、あのCMです。
関東出身の記者(30)も幼いころから、このCMに心を奪われていた。CM誕生のいきさつを教えてもらおうと、堺の本社を訪ねた。
「社運をかけた勝負CMだったんですよ」。創業者の竹本功一会長(61)が取材に応じてくれた。竹本さんは高知県出身。1979年に高知市内のデパートで始めたピアノ販売会社「竹本楽器」が、会社のルーツだ。86年、社名を「タケモト商店」に変更し、本社を大阪府岸和田市に移した。88年から中古ピアノを買い取り、それを海外に輸出するビジネスで成功した。
竹本さんによれば、財津さんが登場するCMは2000年から現在までずっと、二つの曲を使った2パターンが流れ続けている。このCM誕生前にも、6本ほどCMをつくってきたが、効果は上がらなかった。竹本さんをはじめ社員がチラシを配り、解体業者に「壊される家にピアノがあったら教えて欲しい」と頼むしかなかった。それでも、中古ピアノはなかなか集まらない。そこで、竹本さんは起死回生を狙い、新CM制作チームを社内に設置した。
メロディーはプロの作曲家が手がけたが、歌詞は、長年会社のPRを担ってきた北川勝利(きたがわまさとし)さん(58)が悩んだ末に編み出した。北川さんによれば、竹本さんから社名を生かした歌詞づくりのミッションを受け、1カ月ほど悩んだ。姿を見かねた竹本さんが「社名を変えようか」と声をかけるほど深刻だった。ある日、通勤途中にホテルのロビーに座り、一息ついたとき、「もっと も~っと タケモット」の歌詞が降りてきたんだそうだ。
制作チームは、竹本さんがファ…