デビューに向けて健闘を誓い合う山下夏鈴選手と宇留田翔平選手(右)=津市藤方
三重県出身の2人の20歳が今月、ボートレース津からデビューする。名張高で新体操に打ち込んだ山下夏鈴(かりん)選手と、津西高で球児だった宇留田(うるた)翔平選手は、ともに子どもの頃からボートレースにあこがれていた。狭き門をくぐり、地元から「水上の格闘技」に挑む。
ともにボートレース津での観戦が、プロへの第一歩だった。
山下選手は伊賀市出身。小学生の頃、三重所属の本部めぐみ選手の子どもと山下選手の妹が同級生だった縁で、初観戦した。「普段は優しいめぐみさんが、ヘルメットをかぶるとかっこいい。ギャップにひかれました」
小1で始めた新体操と競艇には、体重管理が不可欠で細身の体が有利という共通点があった。まずは新体操に集中し、名張高で全国大会にも出た。高校卒業後、飲食店でアルバイトをしながら2度目の挑戦で競艇選手の試験に合格した。「新体操で鍛えた柔らかさが、ボートに乗る姿勢を保つのに役立った」と言う。
宇留田選手は松阪市出身。幼い頃、競艇ファンの父にボートレース津に連れられ、とりこになった。「ターンしている時の迫力が好きだった。小学校の頃から、将来の夢はボートレーサーしかなかった」
野球も続けて津西高では正二塁手を務めた。卒業後はボートレース津でアルバイトしたり、ジムで鍛えたりして、4度目の挑戦で合格した。
2人は昨秋、1220人の中から選ばれた34人の同期として福岡県内の養成所に入った。レースは男女関係なく戦い、ボート整備も自身の手で行う厳しい世界だ。
山下選手は「男子は軽々とエンジンを運べるのに、私はしんどかった。ハンドルも固くて手首を痛めて腱鞘(けんしょう)炎になった」。そんな中、同期のリーダー役も担った、1学年上の宇留田選手の存在が励みになった。
宇留田選手は「レースは気温や湿度で展開が変わるし、相手の行動も読まなければいけない。単純な乗り物に見えるけど、扱うのは奥深かった」。
約1年後、養成所を修了したのは25人。厳しい訓練に耐えた2人も無事、修了した。宇留田選手は5~8日、山下選手は14~19日のレースでデビューする。
山下選手は息の長い選手を目指す。「1年目は1回でも多く乗って勉強したいし、若いファンが増えたらうれしい。結婚しても、できるだけ長く気の済むまで乗り続けたい」
宇留田選手は三重所属の実力者、新田雄史選手が目標だ。「ターンが上手で、リードしても攻め続けるところがすごい。少しでも追いつき、追い越したい」(広部憲太郎)