エジプト東部シナイ半島のイスラム教礼拝所(モスク)で先月24日に300人以上が殺害されたテロ事件は、発生から9日たった3日までに犯行声明は出ていない。犯行グループの背景や意図が解明されない中、新たなテロを阻止するための厳戒態勢が続いている。
モスクで爆発・銃撃、200人死亡 エジプト東部
神秘主義者が標的か エジプトのテロ、死者235人に
エジプト東部テロ、死者305人に IS系か
政府系アハラム紙は地元当局の発表として、このテロでの死者は29日までに311人に達したと報じた。
1日午後、現場となったアリーシュ近郊ビル・アルアブドのモスクでは物々しい警備の中、シナイ半島に居住する部族の人々らが追悼式を開いた。式では宗教指導者らが「テロリストは無実の人たちを殺し、恐怖に陥れた」と非難した。
山岳地帯での案内役を務めるなどして軍や治安部隊のテロ掃討作戦を支援してきた地元の部族連合は先月25日、「テロリストがシナイ半島から一掃されるまでは、我々は眠らない」との声明を発表するなど対決姿勢を鮮明にしており、緊張が高まっている。
犯行を巡っては、過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う「ISシナイ州」が、自らの存在を示すのが主な目的だったとの見方が出ている。続く攻撃を警戒し、エジプト内務省は礼拝所や政府施設などを中心に、全土で厳しい警備態勢を敷いている。外国の大使館が多いカイロ中心部などでは、事件後、従来より多くの警官が配置されている。テロの負傷者の多くが収容されている東部イスマイリアとカイロをつなぐ道路では、検問所が増やされるなどしている。
内務省によると先月28日、東部イスマイリア県で、治安部隊がテロを準備しているとみられるグループの隠れ家を襲撃。11人を殺害し、武器を押収した。シーシ大統領は29日、軍に対し「容赦ない武器を使って」でも、3カ月以内にシナイ半島の安定を取り戻すよう命じた。(カイロ=杉崎慎弥)