トランプ米政権による中東アフリカ諸国などからの入国を規制する大統領令について、米連邦最高裁は4日、全面的な執行を認めた。連邦控訴裁の審理が終わるまでの一時的な措置だが、訴えが最高裁に上告された場合、トランプ氏が命じた入国規制令が容認される可能性が強まった。
今回全面執行が認められたのは9月末に出された新たな入国規制令。シリア、イラン、イエメン、リビア、ソマリア、チャド、北朝鮮、ベネズエラの計8カ国が対象だった。トランプ政権は「米国に与える脅威の度合いを元に規制した」と説明している。
一方、ハワイ州政府などが「国籍をもとに差別している」などと指摘し、中東アフリカのイスラム圏6カ国について無効を求めて提訴。メリーランドとハワイ両州の連邦地裁は一部執行停止の決定をしたが、政権側が控訴し、二つの連邦控訴裁で審理が行われる。
この日公表された最高裁の命令では、控訴裁に入国規制令が適法かどうかの審理を速やかに進めるよう求め、その間の全面執行を認めた。反対したのは最高裁判事9人中、リベラル系の2人のみだった。
ホワイトハウスの副報道官は「最高裁の決定には驚かない。入国規制令は適法で、我が国土を守るために不可欠だ」と話した。一方、入国規制に反対する米自由人権協会(ACLU)幹部は、トランプ氏が先週、反イスラムの動画をツイッターに共有したことに触れ、「反イスラムの偏見を持っていることは明らかだ」と批判している。(ワシントン=香取啓介)