小野寺五典防衛相(中央)と会談するロシア軍のゲラシモフ参謀総長(右から3人目)=11日午後、防衛省、相原亮撮影
ロシア軍が来年にも、千島列島に地対艦ミサイルを配備する計画が明らかになった。ロシアは、日本が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を米国から導入することに強い懸念を示し、北方領土を含めた地域で軍備増強を加速。安全保障上の立場の違いが、日ロの領土交渉に影を落としている。
「温度差」浮き彫り、「肩すかし」の訪ロ 日ロ首脳会談
「この装備は米軍が管理している。そのことについて心配がある」。ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長は11日、防衛省で小野寺五典防衛相と会談した際、イージス・アショアに懸念を示したという。
小野寺氏は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威をふまえた導入であることを説明。「米軍ではなく、日本の自衛隊が自ら運用する。ロシアを含め周辺国に脅威を与えるものではない」と理解を求めた。
ロシア側は11月の日ロ外相会談でも、ラブロフ外相が「東アジアの安全保障が変化する」との懸念を河野太郎外相に伝えていた。
度重なる言及の背景には、2014年のウクライナ危機をめぐる制裁強化を経て強まった米国への警戒感がある。ロシアはクリル諸島(千島列島と北方領土のロシア側の呼称)、カムチャツカ半島を結ぶ地域を「対米防衛線」と位置づけ、軍備増強を進める。さらに北朝鮮問題が緊迫し始めると、日米の弾道ミサイル防衛(BMD)体制に口をはさみ始めた。
ロシアメディアによると、ロシアは千島列島中部のマトゥア島(日本名・松輪島)と北部のパラムシル島(同・幌筵島)で地対艦ミサイル「バスチオン」と「バル」を配備する方針。両島は旧日本軍が第2次世界大戦中に拠点を構えた要所で「上陸部隊の迎撃のほか、米空母のオホーツク海侵入を防ぐことができる」(軍事専門家)とされる。
択捉島、国後島の軍事基地も11年ごろから装備を近代化しており、昨年には地対艦ミサイルを配備した。外務省幹部は「冷戦後に国際社会で低下した外交面の影響力を軍事分野で取り戻そうとしている」とみる。
プーチン大統領は11月の記者会見で、北方領土を返還した場合にロシア海軍の活動が制約されるリスクを踏まえ、「(日米安全保障条約で)日本にどんな軍事的義務があるのかを明らかにする必要がある」と指摘していた。
■北方領土交…