(1日、スペイン1―1ロシア=PK3―4 ワールドカップ)
守護神への信頼は絶大だった。
ロシアが120分間、スペインの猛攻を耐えきってPK戦を迎えた時だった。「『GKアキンフェーフなら何とかしてくれる』『はね返してくれるはず』と周りの選手が口々に言い始めた」。FWジュバが明かした。命運は主将でもあるアキンフェーフに託された。
ロシア、もくろみ通りのPK戦 GKが2本防ぐ大活躍
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再三の好セーブを見せていたアキンフェーフはPK戦でも変わらなかった。スペインの3人目MFコケのキックを読み切ってセーブ。5人目のFWアスパスのシュートは、右に横っ飛びしながら左足を振り上げ、ボールをはじき出した。くじ引きとも言われるPK戦の勝利を自らの手でたぐり寄せた。
正真正銘のエリートだ。日本代表MF本田圭佑も所属したCSKAモスクワに子どもの頃から32歳の現在まで所属する。6歳以下では入れないクラブに才能を見込まれ、4歳で加入。常に年上のチームでプレーし、GKでは異例の17歳でトップチームにデビューした。
ロシア代表入りは2004年で、18歳20日は最年少記録。「(旧ソ連の伝説的GKである)レフ・ヤシンや、リナト・ダサエフに続くGK。才能は当時から間違いなかった」。CSKAモスクワの育成組織で10歳からアキンフェーフを教えたパベル・コバリさん(60)は言う。
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まじめがトレードマークだ。プレーだけでなく、毎年のようにコバリさんを訪ね、GKのグローブやシャツを子どもたちのためにプレゼントする。コバリさんがライバルチームの下部組織で働くようになると、CSKAではなく、ロシア代表のものを用意する気遣いも忘れない。初心を忘れないため、CSKAでの背番号は「35」。デビューした時のままだ。
1988年の欧州選手権で準優勝するなどした旧ソ連時代の強さは過去のこと。近年のロシアは低迷が続き、大会前は1次リーグ敗退も危惧されていた。「ロシア代表の活躍は難しい……」と元スポーツ大臣のムトコ副首相も取材に漏らすほどだった。
それが期待を上回る躍進。「自分たちもできるんだということを見せることができた」とアキンフェーフは言った。ロシアが復活ののろしを上げた。(河野正樹)