ブリュッセルで14日、欧州連合(EU)首脳会議で記念撮影するフランスのマクロン大統領(前列左)やドイツのメルケル首相(前列中央)ら=AP
14~15日に開かれた今年最後の欧州連合(EU)首脳会議(サミット)は、英国のEU離脱交渉の進展を確認する一方、共通通貨ユーロを使う国々の統合強化を話し合った。今年は統合のきっかけとなったローマ条約の制定から60周年だが、加盟各国で反EUの動きが際だった。統合の終わりか、それとも再加速か。欧州にとって試練の年として記憶されるだろう。(ヨーロッパ総局長=石合力)
「次の交渉に野心と創造力を持って臨みたい。特に(経済環境の激変を防ぐ離脱後の)移行期間での合意を優先させたい」
ブリュッセルでのEUサミットに出席したメイ英首相は14日、EUとの離脱交渉の進展に胸を張った。英国のEU離脱は、欧州、英国双方の行方に大きな影響を及ぼす最大の懸案だ。2019年3月の交渉期限に向けて議論が続く。
通常年4回開かれるEUサミットはいま、加盟28カ国の全体会議のほかに、英国を除く27カ国で離脱の対応を議論する場を持つことが通例となった。
60年前の1957年、西ドイツやフランスなど西欧6カ国がローマ条約に署名し、基礎を作った統合は、冷戦後の93年にEUに発展し、東欧にも拡大。不戦の誓いと経済的利益の増大を目的に域内総人口5億人の巨大市場になった。今年は加盟国の英国が離脱手続きを正式に始めたことで、拡大を続けてきた欧州統合の歴史で、縮小に向けた逆ベクトルの議論が初めて具体化した年となった。
今のところ離脱の動きは英国以外には広がらず、「離脱ドミノ」は起きていない。だが、今年、欧州各国で相次いであった大統領選挙や総選挙を振り返ってみると、EU離脱を決めた昨年6月の英国民投票以降、欧州に吹き荒れた「反EUや反移民・難民」などを掲げる大衆扇動的な右派ポピュリズムの勢いが、収まっているとは言いがたい状況だ。
今年3月のオランダ総選挙では…