大河ドラマ「西郷どん」の鈴木亮平さん=村上健撮影
大河「西郷どん」に主演
7日開始の「西郷(せご)どん」(日曜夜8時)で、主人公・西郷隆盛を演じる。「ずっとやってみたかった」というNHK大河ドラマ。しかし重圧や緊張は驚くほどないそうだ。制作規模も関わる人の数も桁違いだからこそ、「自分一人が頑張ったところで」と、逆に力が抜けたという。
とにかくよく泣く西郷、「共感力」が魅力 鈴木亮平
「僕は、グイグイ引っ張っていく主役というタイプでは、おそらくない。『まあ鈴木だから、みんなでサポートして盛り上げてやろう』っていうことが、チームとしての大きな力のうねりになっていくんじゃないかな」。人懐こい笑顔で、あくまで自分を冷静に省みた分析を語られると、説得力がある。
出演作によって印象をがらりと変え、役作りへのこだわりは高い評価を得てきた。今回は「お芝居をしちゃいけない役」だという。「1年にわたって人間西郷を描く。見てくれる人に、吉之助を応援して、一緒に泣いて、共感してもらわないといけない」。取材中、「隆盛」ではなく通称の「吉之助」を多用するのも、そのためだろう。
一人の青年がいかにしてあの西郷になったかを知ろうと、あえて創作や資料を読み込まず、代わりに鹿児島や奄美群島、京都など、ゆかりの地を訪ねた。特に印象に残ったのは桜島だという。「存在感が圧倒的。自分たちの力ではどうしようもない大自然が目の前にある。一方、人間の世の中はどう見えるか。人間の世は変えられると思ったのでは」
見えてきたのは、よく泣き、よく走る、情熱的な西郷像。「愛する人はとことん愛し、怒ることにはとことん怒る。根底にあるのは他人への愛情。自分よりも他人を優先する人間なんだなってすごく思います」。西郷は「共感力」の人だと評する。
撮影も放送も長丁場。西郷でいる時間の方がはるかに長くなる、と覚悟を決めている。「西郷吉之助を自分は生きたぞ、と心の底から感じられる1年にしたい」。ドラマが始まれば、西郷と聞けばこの顔が浮かぶようになる。そんな予感がする。(文・滝沢文那、写真・村上健)