スティーブン・バノン元米大統領首席戦略官
トランプ米大統領は3日、最側近とされてきたバノン前首席戦略官について、「(バノン氏は)解任される時、職だけではなく、正気も失った」と声明で激しく批判した。近く出版されるトランプ政権の暴露本で、トランプ氏の親族らを批判したり、ロシア疑惑の捜査が進むなどと述べたりしたことに反発したとみられる。
トランプ氏は声明でバノン氏について「私や、私の大統領の地位に何の関係もない」「私と一対一で面会することはめったになかった。一部の人をだますために影響力があるように装っているにすぎない」と突き放した。暴露本についても「いんちき」と断じた。大統領が公式声明を出してこうした批判をするのは異例だ。
暴露本はジャーナリストのマイケル・ウルフ氏が今月出版する予定。トランプ氏自身や側近らのべ200人に対する1年半にわたるインタビューに基づいているという。
出版に先立ち、英紙ガーディアンと米誌ニューヨークなどが伝えた抜粋によると、バノン氏は、トランプ氏の息子ジュニア氏や娘婿クシュナー氏らが一昨年6月の大統領選中にロシア人弁護士と面会したことを「反逆的で非愛国的」と批判。「すぐにFBI(連邦捜査局)を呼ぶべきだった」と話したという。またジュニア氏がロシア人弁護士をトランプ氏自身に引き合わせた可能性にも言及した。
ロシア疑惑を捜査しているマラー特別検察官は、ジュニア氏とロシア人弁護士の面会について調べているとされる。
ロシア疑惑についてバノン氏は、マラー氏の捜査の焦点が資金洗浄(マネーロンダリング)にあると分析。ジュニア氏やクシュナー氏は資金洗浄の疑惑が濃厚だとして「(マラー氏は)ジュニアを卵のようにたやすく割るだろう」と語った。また「(クシュナー氏らを)絞り上げた上で、争うか取引するかを迫るだろう」と話した。
ロシア疑惑の捜査に直面しているトランプ政権についても「ビーチで座って、カテゴリー5(超大型ハリケーン)を止めようとしている」と比喩を使って無策ぶりを表現したという。
バノン氏は一昨年8月にトランプ陣営の選対トップに就任。排外主義的な「米国第一」政策を掲げ、トランプ大統領誕生の立役者となった。だが政権内でクシュナー氏らと激しく対立し、昨年8月に更迭された。バノン氏は解任後の朝日新聞の取材にも「よく電話で話す。だいたい彼が私に掛けてくる」などと述べ、トランプ氏との関係は良好だとしていた。(ワシントン=杉山正)