記者会見する柳沢文孝教授=昨年12月21日、山形市の山形大学
国内最大規模の面積を誇る蔵王の樹氷が、今世紀末にはなくなってしまうかもしれない。山形大学の柳沢文孝教授(地球化学)がそんな研究結果を発表した。地球温暖化による気温の上昇が原因だという。
柳沢教授は、記録の残る1920年代以降の全国の樹氷の変遷を調べて地図をつくった。30年ごろまでは北海道や長野県でも樹氷があったが、厳冬の年を除けば70年ごろには東北地方の一部の山岳地帯でしか樹氷が確認できなくなっていたという。地球温暖化による気温の上昇で樹氷が衰退したとみられる。
樹氷は、空気中の水分や雪が木に付着して大きな雪の塊に成長したもの。山形地方気象台の記録では、山形市の平均気温は20年ごろに比べて現在は2度ほど高い。蔵王でも樹氷ができる標高の下限があがり、範囲が狭くなっている。
柳沢教授は、今後平均気温がさらに2度上がれば、蔵王以外では樹氷が見られなくなると推測する。蔵王でも学術的には樹氷と言えるものの、木を完全に雪の塊が覆う形ではなくなってしまうと考えられる。3度の上昇なら蔵王でも樹氷ができなくなるという。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、何も対策をしないと今世紀末には世界の平均気温が3・7度上昇するとしている。
蔵王の樹氷は、外国人観光客もひきつける冬の観光資源。柳沢教授は「樹氷は環境の変化に敏感に反応する。今世紀末に樹氷がなくなる可能性があり、なんとか気温の上昇を食い止めるべきだ」と警鐘を鳴らしている。研究は5月、日本雪氷学会東北支部大会で報告する予定。(宮谷由枝)