広島市安佐北区の路上で男性２人が殺傷された事件で、死亡した座山（ざやま）則男さん（７５）について、手などで防御した際にできるような傷がなかったことが捜査関係者への取材でわかった。県警は、抵抗する間もなく、突然襲われたとみている。

バス待つ２人を無差別襲撃か 広島、男性ら死傷

県警によると、司法解剖の結果、座山さんの死因は腹部を刺されたことによる失血死と判明。傷口は１カ所で、深く刺されていたという。事件当時、襲われた２人はバス停でバスを待っていた。けがをした男子大学生（２０）は突然背後から包丁で刺されたといい、その後すぐ、そばにいた座山さんが襲われたらしい。

殺人と殺人未遂容疑で逮捕された高橋豪（ごう）容疑者（３３）＝同市安佐北区可部（かべ）３丁目＝は「誰でもよかった」と無差別殺傷が目的とみられる供述をしている。県警は１６日の自宅の家宅捜索で、タブレット端末やノートなどを押収しており、事件の経緯や動機の解明を進める。（小林圭、高橋健人）

一方、殺人と殺人未遂容疑で逮捕された高橋豪（ごう）容疑者（３３）が現場からの逃走のために乗ったとみられるタクシーの男性運転手（７０）が取材に対し、当時の様子を話した。

高橋容疑者とみられる男は現場から南へ約１キロのＪＲ可部（かべ）駅（広島市安佐北区）のタクシー乗り場から乗車。目的地を聞くと、「広島駅のホテル」。顔は青ざめ、息を切らして大量の汗をかいていたため、「どうしたの」と聞いても何も答えなかったという。

また、捜査車両とすれ違う際には体を縮める様子を見せ、約１３キロ離れたＪＲ広島駅（同市南区）で降りる時には「どこかホテルを知らないか」と話しかけてきた。降車後に、後部座席を見ると、大小の血の跡がついていた。

この運転手はその１時間半ほど前、亡くなった座山（ざやま）則男さん（７５）も自宅からカラオケ店まで乗せていた。１０年以上の付き合いがある常連客だったといい、

事件後は座山さんの顔を思い出し、「眠ってもすぐに起きてしまう」と複雑な心境を語った。（高橋健人）