銃撃されたキャピタル・ガゼット紙の29日付朝刊オピニオン欄。「きょう私たちは言葉を失った。職場で起きた木曜日の銃撃事件の被害者を追悼するため、このページを白紙にしました」と説明し、犠牲者5人の名前を掲載した=29日、金成隆一撮影
米メリーランド州アナポリスの新聞社「キャピタル・ガゼット」が銃撃され、記者ら5人が死亡した事件で、捜査当局は29日、ジャロッド・ラモス容疑者(38)は記者らの避難経路をふさいだ上で銃撃するなど、「できるだけ多くを殺害しようとしていた」との見方を示した。単独での計画的な犯行だったという。
捜査当局は同日、ラモス容疑者は、新聞社の裏口をふさいだ上で「無実の人々を追い詰め、銃撃する戦術的な手法」を使ったと記者団に説明した。犠牲者の1人は裏口から逃げようとした際に射殺されたという。
ラモス容疑者は1年ほど前に合法的に購入された連射式の散弾銃を犯行に使った。自身の逃走計画も練っていたが、警察が駆けつけた時は机の下に隠れ、銃撃戦にはならなかった。
捜査当局はラモス容疑者がキャピタル・ガゼット社への敵意を募らせていたとの見方も示した。ラモス容疑者は、自身の女性への嫌がらせをめぐる2011年のキャピタル紙の記事で名誉を傷つけられたとして、同社を相手取って訴訟を起こしたが、15年に敗訴。13年にはネット上に同社を脅迫するメッセージを書き込んだが、同社は敵意を増幅させることを懸念して刑事告発はしなかったという。
一方、トランプ大統領はこれまで政権や自身に批判的な記者や報道機関を「米国人の敵」と繰り返し呼んできたが、今回の事件を受けて29日、「ジャーナリストは職務中、暴力的に攻撃される恐怖から無縁であるべきだ」と強調した。(アナポリス=金成隆一)