富山市の交番で警察官が刺殺されて拳銃を奪われ、近くの小学校で警備員が撃たれて死亡した事件で、現場近くの住宅街に複数の血痕が残されていたことがわかった。周囲では、殺人未遂容疑で逮捕された元自衛官でアルバイト店員の島津慧大（けいた）容疑者（２１）＝富山県立山町＝とみられる男が目撃されており、島津容疑者は銃を奪った後に住宅街を経由して小学校へ向かった可能性がある。

両手に刃物持ち交番へ 容疑者、ひも切断し拳銃強奪か

血痕は、島津容疑者が２６日午後２時ごろ、稲泉健一警部補（４６）を襲い、刃物のようなもので腹など数十カ所を刺し、拳銃を奪ったとされる富山中央署奥田交番から住宅街に入った複数の場所で確認されている。

交番の裏手に住む男性（８６）は事件後、けたたましいサイレンを聞いた。玄関を出ると、警察官に「出ては駄目」と制止された。いったん自宅内に戻ったが、その後、警察官が訪れ、「自宅前に血痕がある」と言われたという。玄関前の敷地内には数十滴の血痕があったという。

血痕は交番から北東方向へ約６０～１００メートルの路上や駐車場でも見つかっており、捜査員が鑑識活動にあたっていた。

交番から約１５０メートル北東に住む７０代の女性は、犬がうるさくほえたので外に出たという。隣家の倉庫前のブロックに、白いシャツ姿の男が腰かけていた。不審に思い、注意しようとすると、男はこの住宅から西方向にある富山市立奥田小学校の方向へ歩いて立ち去った。男が歩いた後には点々と血が残り、座っていた場所には、血まみれの布きれも落ちていた。「気持ち悪い。変な人がいる」と思っていると近所の人も外に出てきて、事件を知った。この男は島津容疑者の可能性がある。

県警によると、稲泉警部補から拳銃を奪った島津容疑者は同午後２時２５分ごろ、奥田小の正門付近で警備員の中村信一さん（６８）を拳銃で撃ち、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。

この際の様子を小学校の近くに住む男性（５９）が目撃していた。男性は、「パン！ パン！」という音を聞いて外へ出た。奥田小正門前の駐車場で、中村さんと島津容疑者が近距離で相対していたという。男性は「警備員（中村さん）がガクッとひざからゆっくり崩れ落ちた。おなかをおさえて、しばらくうずくまっていた」と証言した。島津容疑者とみられる白シャツ姿の男は、右肩あたりが血だらけだったという。

その後、島津容疑者は小学校の敷地に入っていった。現場に駆けつけた警察官が「とまれ！」と叫んで追いかけ、その後発砲音を聞いた。島津容疑者の姿は見えなかったが、中村さんが倒れた駐車場では、５、６人が心臓マッサージをしているのが見えたという。

県警が交番での事件を覚知してから島津容疑者を逮捕するまで２０分足らず。県警はこの間の足取りを確認するとともに、２７日午前から自宅を家宅捜索し、事件の経緯を調べる。