秋田県内で撮影されたイノシシ(2016年11月、秋田県由利本荘市、同県提供)
イノシシが日本列島を北上している。これまでは西日本や関東などで深刻な農業被害が起きてきたが、冬を越せずイノシシが生息できないとされていた東北北部でも被害が出てきた。最前線の秋田県では、この数年で被害や目撃情報が北部にも広がっている。しかし、対策は難しいのが実情だ。
「クマ、タヌキはよく見かけるけど、イノシシは初めて。また来るべか」
秋田県北部、北秋田市の山あいの集落。昨年5月下旬にジャガイモ畑を荒らされた女性(77)は不安がる。初めはニホンカモシカの被害と思ったが、足跡からイノシシとわかった。
農林水産省などによると、イノシシは全国に約94万頭が生息するとみられ、2015年度の農作物被害は計約51億円に上った。獣類による被害額の36%を占め、シカ(42%)に次いで多い。最も被害が大きい九州で約15億円、中四国で約12億円、関東で約9億円。東北は約2億円とされる。
秋田県などによると、イノシシは冬に30センチ以上の積雪が70日以上続く地域では越冬できないとされる。かつて生息域の北限は宮城県とされ、青森、秋田、岩手、山形は空白地域だった。
しかし、山形、岩手で10年ごろから被害が出始め、秋田県では12年2月に南部の湯沢市で初めて確認された。以後、秋田県内での目撃情報は増え、16年度は延べ42頭に上った。今年度も昨年末までに延べ35頭を数える。農作物の被害も昨年度初めて発生。今年度はすでにイモ類、水稲など11件となっている。100年以上前に絶滅したとされていた青森県でも昨年8月、秋田県境に近い深浦町で確認された。
■「大変な被害出る可能…