天皇陛下の退位の儀式について、政府は「退位礼正殿の儀」の名称で、2019年4月30日に憲法が定める天皇の国事行為として行う検討に入った。根拠法令がないため、新たに退位の礼を行う方針を来月中に閣議決定する。政府は退位に関して二つの国事行為を検討していたが、保守派の異論に配慮して一本化する。
儀式では首相が発言した後、天皇陛下が最後のおことばを述べる案が有力だ。当初は天皇のおことばの後、首相が「奉答(ほうとう)文」を返す案を検討したが、政府関係者は「国民代表の首相の発言が先の方が、国民の理解と共感のもとで退位するという退位特例法の趣旨に沿う」と指摘。天皇の政治関与を禁じた憲法にも、より整合するとしている。
1989年1月の天皇陛下の即位では、皇位のしるしとされる神器などを引き継ぐ「剣璽(けんじ)等承継の儀」と新天皇が最初のおことばを述べる「即位後朝見の儀」が、初めて国事行為として行われた。今回、両儀式は皇太子さまが即位する19年5月1日に行う方針だ。
政府は退位でも両儀式に対応する形を検討したが、神社界などの保守派が「皇位は神器とともにある」と退位前の神器を手放す儀式に反対。このため政府は神器を手放す儀式は見送り、退位の礼には神器を手放す趣旨を含めない方針だ。
政府の「式典準備委員会」(委員長=菅義偉官房長官)は3月半ばをめどに、皇位継承の儀式に関する基本方針を定める。天皇陛下の即位30年を祝う政府主催の式典は19年2月中に行う方向で調整している。(二階堂友紀、大久保貴裕)