羽生善治竜王と対局する藤井聡太五段(手前)を見つめる加藤一二三九段=17日午前、東京都千代田区、柴田悠貴撮影
加藤一二三九段は17日午後、朝日新聞記者のインタビューに応じ、羽生善治竜王を破って決勝進出を決めた藤井聡太五段の強さについて語った。インタビューの内容は以下の通り。
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中盤まで互角の勝負だったが、本来終盤に強い羽生さんの手がどうだったか。羽生さんとしては不出来だったのではないか。これに対して、藤井さんの勝負勘は素晴らしかった。15歳の少年五段の指し方としては非常にダイナミックで、厳しい局面でも勝負に持ち込むノウハウ、コツをすでにつかんでいる感じがする。
藤井さんはこの1年で、ほぼ60勝した。これは空前絶後の大記録で、しかもその中に現役の名人や羽生さんや、強い人を破っての記録だからすごい。文句なしに絶賛します。14歳、15歳のころの研究量では1番ではないか。2位は羽生さん。努力して強くなる秀才型。攻めはさえて、受けは強い。ひとことでいうと欠点がない。どんな棋士にも欠点はあるもので、これはものすごいことなんです。
次の決勝で勝ったら史上最年少の六段昇段(15歳6カ月)ですか。これまでは私の16歳3カ月。一般棋戦優勝の年少記録も史上最年少ですか。これまでは私の15歳10カ月。彼が大記録を打ち立てるたびに私のことが取り上げられ、「加藤一二三ってすごい」となるんで、これもうれしい。
彼が棋士として今後、羽生さんを超えるかどうかは、正直、わからない。羽生超えの可能性もあるが、20歳の藤井さんまで見届けたい。そのときに七段では不満。八段になっていれば、天才と言ってあげると公言しているんです。(聞き手・大出公二)