ガス・ケンワージー=ロイター
スタートする前、愛するボーイフレンドを抱き寄せて、小さくキスをした。
特集:平昌オリンピック
言葉を動きに、動きを言葉に。「孤高の星 羽生結弦」
18日のフリースタイルスキー男子スロープスタイル。ガス・ケンワージー(米)は、「最後の五輪を彼と共有したかったんだ」と振り返った。
米メディアのインタビューで、自らゲイであることを公表したのは2015年。ソチ五輪で銀メダルに輝いた翌年のことだった。以来、米スポーツ界における性的少数者のシンボル的存在であり続けている。
肝心の結果は、12位。2大会連続の表彰台には届かなかった。大会直前の練習で右手の親指を骨折してしまったことも、少なからず影響した。それでも、「メダルを取ることはできなかったけど、もっと大きなことを達成した」。下は向いていない。
会場で見せたパートナーとの短いキスシーンは、テレビで全米に生中継され、SNSを通じて世界中の話題となった。「撮られていたなんて知らなかった。でも、すごく幸せだ」。自身のツイッターでは、「子どもの時、五輪中継でこんなキスは見られなかった。でも、今、子どもたちは見ることができる」と発信。つぶやきには、4万近くのリツイートがあり、22万を超える「いいね」が寄せられている。
「表現することが、壁を破り、偏見を壊すためのたった一つの方法だ」。キスには、26歳のそんな思いが込められている。「一番大事なことは、誰もが自分に正直に生きること。ソチ五輪ではやろうとはしなかったけど、今回、僕は僕自身でいられた。性的少数者のコミュニティーを代表できたことを誇りに思う」
ケンワージーのキスを見守った観客席では、「性の多様性」を表す虹色の旗が揺れていた。(吉永岳央)