ジャパンパラアルペンスキー競技大会の回転女子立位で優勝し、笑顔を見せる本堂杏実=加藤諒撮影
楕円(だえん)球をスキーのストックに持ちかえ、9日開幕の平昌パラリンピックに初出場する。アルペン代表の本堂杏実(ほんどうあんみ、21)=日体大3年。ラグビーから転向して1年半で代表の座を射止めた。
本堂は生まれながらにして左手の5本の指が欠損している。5歳でラグビーを始めると、タックルが得意になった。「『もし手があったら(相手を)つかめたのに』と考えると悔しくて」。障害が練習の原動力でもあった。ラグビー経験がある父の勝之さん(48)は「低く飛び込めばどんな相手も倒せる」と熱心に指導。小学生時代から関東ユースの選抜チームに入り、18歳以下の日本選抜で試合に出た経験もある。
女子ラグビーの日本代表を目指し、日体大にトップアスリート枠で合格。高校まではパスをさばくスクラムハーフだったが、大学では激しい接触プレーが多いフランカーに転向し、社会人チームも出場する15人制のピンクリボンカップで大会MVPにも選ばれた。
転機は大学1年の冬。日体大の教授から「パラリンピックに興味ない?」と声をかけられた。陸上種目やテコンドーが候補に挙がったが、選んだのはスキー。母の純子さん(43)が好きで、杏実も3歳でスキー板を履いた。
1年半の競技歴で大舞台へ。日本代表の志渡一志ヘッドコーチは「ラグビーで鍛えていたから体が強く、転ぶのを怖がらない」と評価する。ストックは右手1本。左右非対称の体勢で急斜面を滑るのは難しいが、持ち前の度胸と運動能力でスキー技術も急成長した。
「以前は(障害が)恥ずかしい気持ちもあった」と本堂は振り返る。それがパラリンピックを目指すようになって意識が変わった。「自分より重い障害の選手が果敢に滑っている。今は、この世界で自分が頂点に立ちたいと思っています」。得意は高速系種目のスーパー大回転だ。(波戸健一)