「チャイルドラインあいち」の専務理事、高橋弘恵さん=名古屋市内
春は門出のシーズン。新たな進路や入学試験の結果について悩む子どもたちは少なくない。どうしていいかわからなくなり、命を絶つこともある。専門家は「相談を受けたら否定せず、まずは受け止めて」と呼びかけている。
「芸術系の学校に行きたいけど、親は将来食べていけないからと反対する」「今の成績では志望校には受からないと教師に言われた」。18歳以下向けの電話相談「チャイルドライン」を愛知県内で展開するNPO法人「チャイルドラインあいち」には、受験シーズンになるとこうした成績や進路の悩み相談が増えるという。
同NPO専務理事の高橋弘恵さん(57)は「進学先が親の希望と合わないといった相談は、家庭の悩みに分類される。受験で悩む子どもはもっと多いと思う」と話す。また、相談相手であるはずの大人に否定されて電話してくるケースが多いという。
そんな子どもたちに対して、高橋さんら相談員は「志望校に入学したらどんなことをしたい?」などと、子どもたちの意見を肯定し、受け止めることを大切にしているという。高橋さんは「一緒に考えようという姿勢が大切。対等に話せば、大人と子どもで合意点に達することができる」と説明する。
警察庁の統計では、2016年の20歳未満の自殺者で、警察が遺書などから推定した動機のうち、「学校問題」が原因とされたのは151人。そのうち「入試に関する悩み」は24人、「その他の進路に関する悩み」は38人、「学業不振」は44人だった。「いじめ」は8人、「その他学友との不和」は18人で、子どもたちにとって進路や成績は大きな悩みの種となっている。
受験制度の複雑化が子どもたちの進路の悩みにつながるという指摘もある。ベネッセ教育総合研究所の邵勤風(しょうきんふう)・初等中等教育研究室長は「大学受験を例にとっても、親世代が知らないAO入試や推薦入試など制度が複雑化しており、教員間でも進路指導の悩みのひとつになっている」と指摘する。
首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の小学3年~中学3年の子どもを持つ保護者を対象にした同研究所の調査(第4回子育て生活基本調査)では、1998年と2011年に「子どもがすることを親が決めたり、手伝ったりすることがある」と回答した親の割合が小学生で46・9%から61・7%、中学生で36・3%から47・6%といずれも増加。教育熱心な親が増え、干渉が強まる傾向も影響しているとみている。11年以降も、同研究所の別の調査から「何にでも口出しをする高校生の保護者は5割」といった調査結果が出ているという。
邵室長は「大人はサポートに徹し、最後の判断は子どもに任せるべきでは」と指摘する。受験で悩みすぎないためには、将来どこの学校に行くかではなく何をやりたいのかを小さいときから考えさせる癖を身につけるのが大切だという。
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ベネッセ教育総合研究所の調査「第4回子育て生活基本調査」は
http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3278
。教員の進路指導の悩みについては「第6回学習指導基本調査DATA BOOK」(高校版)
http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5081
。
(日高奈緒)
受験などの悩みを相談できる機関
チャイルドライン
(0120・99・7777)
毎日午後4~9時。18歳までの子どもが対象。詳しくは
http://www.childline.or.jp/
へ。
名古屋いのちの電話
(052・931・4343)
24時間受け付けている。インターネットからの相談も可能。詳細はホームページ(
http://www.nagoya-inochi.jp/
)へ。