斉藤章佳さん
大森榎本クリニック精神保健福祉部長 斉藤章佳さん
痴漢が生きやすい社会、なぜ SNSで「し放題」投稿も
「痴漢、助けて」見ぬふりされ…バッジ生んだ少女の思い
国際女性デー特集「Dear Girls」
痴漢は日本で最も多く起きている性犯罪にもかかわらず、加害者や被害者の実態さえ知られていません。私の勤めるクリニックでは12年前に日本で初めて「再発防止プログラム」を始めましたが、参加者の多くは大卒で会社に勤め家庭を持つ、どこにでもいる男性です。被害者には、おとなしそうな女性を選んでいます。女性にもてない性欲の強い男性が痴漢になる、露出の多い派手な女性が被害に遭うといった偏見が、この犯罪の本質を見えにくくしています。
痴漢で逮捕されれば、仕事も家庭も失うかもしれないのに、やめられない。それは、性依存症という病気だからです。彼らと接していると、職場でも家庭でも気を使ってストレスをため、人間関係が苦手な人が多いと感じます。唯一のストレス対処法が痴漢であり、生きがいとなっているのです。
満員電車内で、たまたま女性の体に手が触れてしまうことはあり得ます。大半の男性はそれで終わりますが、痴漢の多くはその瞬間を「電撃が走った」などと表現します。回を重ねるごとに手口を巧妙化させ、「触っても騒がないのは、相手も喜んでいるからだ」と認知をゆがませていきます。こうした認知を持つ背景には、「男性なら女性に何をしても許される」など、男尊女卑的な価値観が根底にあるからだと考えています。
痴漢は学習された行動です。や…