1935年5月に旧試作工場で開かれた「A1型試作乗用車」の完成式典(トヨタ自動車提供)
トヨタ自動車の前身が試作車第1号をつくった愛知県刈谷市の工場跡が、国の登録有形文化財に登録されることになった。文化審議会が9日、登録を求める答申を文部科学相に出した。
トヨタ系の愛知製鋼が刈谷工場内に持つ「旧試作工場」。木造平屋建ての2棟で合計1700平方メートル。1934年に建ち、翌35年にトヨタの前身、豊田自動織機製作所の自動車部が「A1型試作乗用車」の第1号をここで生産した。豊田喜一郎らが、米国車に対抗できる国産車をめざした。
愛知製鋼は10年ほど前から使っておらず、取り壊しを検討した。しかし、トヨタから「創業の原点」との声が上がり、保存が2年前に決まっていた。
ことし7月をめどにした一般公開をめざし、トヨタ産業技術記念館(名古屋市西区)が、展示パネルの準備などを進めている。
一方、Jフロントリテイリング所有の能装束4点が重要文化財に指定される見通し。「紺地菖蒲蓬菊桐文様小袖(こんじしょうぶよもぎきくきりもんようこそで)」など桃山~江戸時代のもの。同社の前身で呉服商を祖業とする松坂屋が昭和初期、服飾のデザイン開発や職人育成を目的に集めた。現在は松坂屋名古屋店で保管しているという。