こうきさんが描いた、アデイonlineでの大塚ひかりさんの連載「変態の日本史」の挿絵(A Day In The Life提供)
東京・新宿2丁目のゲイバーが発信源のウェブマガジンがある。性的少数者が集う街の文化を、エッセーや批評、漫画など様々な表現で盛り込み、性、その他多様な価値観を反映しようと試みる。挿絵の多くを手がける店のスタッフも、この街で居場所を見つけた一人。独特の絵柄と色彩に、その人生がにじむ。
ゲイバー「A Day In The Life」が随時更新するウェブマガジン「アデイonline」。
紫や赤、水色と鮮明な色使いの亀。渦巻く線で表現された蛇……。こうきさん(25)が手がける挿絵は、ポップな色合いから見るのも怖いようなものまで、作風は幅広い。連載を持つエッセイストの中村うさぎさん(60)は「感情を動かされる絵。深くつながれる人もいると思う」。
絵の才能を見いだしたのは、オーナーで作家の伏見憲明さん(54)。数年前、節分に合わせて赤鬼と青鬼のお面を作ってもらったときだ。「びっくりするような怖さで、内面が出ているように感じた」
こうきさんには、親に虐待された過去がある。ゲイだと自覚した高校生の頃、自室に置いていた当事者団体の案内用紙を母に見られた。両親はそれから、食器を洗うたらいや歯ブラシの置き場をこうきさんだけ別にした。高校の卒業式の日、家に帰ると自分の荷物は消えていた。
野宿をしたり、親類を頼ったりし、働きながら専門学校に通っていた20歳の頃にこの店で働き始めた。子どもの頃から好きだった絵を評価してくれる人に出会えた。「絵を描くことは、つらい時に逃げ込める自分の居場所だった。今は、本当に楽しんで描けている」
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