過労事故対策の申入書を厚生労働省の担当者に手渡す渡辺淳子さん(中央)=1日、東京・霞が関
脳や心臓の病気による過労死や、心の病が原因の過労自殺と比べ、「過労事故死」の実態はよく知られていない。深夜勤務後の帰宅中にバイク事故で死亡した会社員男性(当時24)の遺族が起こした裁判が先月和解し、通勤中の事故にも企業に安全配慮義務があると認められたが、こうした例は極めて珍しい。過労死や過労自殺とともに、過労事故死を防ぐ対策の強化も必要だと遺族は訴えている。
「息子の無念の気持ちをくんで、過労事故死においても十分な予防対策を要請します」
東京都八王子市の渡辺淳子さん(61)が今月1日、東京・霞が関の厚生労働省を訪れ、過労事故への対策を求める申入書を提出した。
渡辺さんの次男航太さんは、観葉植物などの装飾を手がける会社、グリーンディスプレイ(本社・東京)に勤めていた。2014年4月24日午前9時過ぎ、長時間の深夜勤務を終えて横浜市の職場からバイクで都内の自宅に帰る途中、電柱にぶつかる事故を起こして死亡した。淳子さんら遺族は会社に損害賠償を求めて横浜地裁川崎支部に提訴。過労による居眠り運転が原因の事故と認められ、2月8日に和解が成立した。会社が遺族に謝罪し、約7600万円を支払うことが和解の条件だった。
同支部の橋本英史裁判長は和解…