「魔女の宅急便」(福音館書店)
「魔女の宅急便」などで知られる児童文学作家の角野栄子さん(83)が26日、児童文学のノーベル賞といわれる「国際アンデルセン賞」の作家賞に選ばれた。国際児童図書評議会(IBBY、本部・スイス)が、イタリア北部ボローニャで開いている児童書フェアで発表した。
日本人の作家賞受賞は、まど・みちおさん、上橋菜穂子さんに次いで3人目となる。
角野さんは早稲田大学卒。20代で移民としてブラジルにわたった。2年後に帰国し、ブラジルでの体験談をまとめた「ルイジンニョ少年」で作家デビューした。
ユーモアを巧みに織り交ぜた作風が愛され、おばけや怪獣が主人公として登場する作品を多く描いている。代表作「魔女の宅急便」(1985年)は、魔女キキがひとり立ちの旅に出かけ、ほうきで空を飛ぶ魔法を使って、見知らぬ町で成長していく物語。89年には宮崎駿監督がアニメ映画化して大ヒットした。IBBYは「多感な時期の少女の感情を描いたとても親しみやすい作品だ」と評価した。
角野さんは朝日新聞の電話取材に「キキのような少女は、子どもから大人への境目で不安定だが、精神的に成長する時期。この世代の子どもを書くと心がわかり合えるような気がして、とても楽しんで書いた。一人ひとりが自由に読んで、読んだ人それぞれの物語として楽しんでほしい」と話した。
角野さんのほかの作品に、アッチ、コッチ、ソッチの3人の愉快なおばけが活躍する「小さなおばけ」シリーズ、「大どろぼうブラブラ氏」「ズボン船長さんの話」などがある。(伊藤舞虹、ボローニャ=河原田慎一)