力投する延岡学園先発の上野=池田良撮影
緊張しないはず。なのに、いつもと違う。先発マウンドに上がった延岡学園の先発・上野元基(3年)は焦っていた。
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一回、先頭に死球。味方の失策も絡んで、先取点を奪われた。その直後、さらに死球を与えた。「コントロールが自分の長所なのに……。自分の投球が全然できなかった」。五回に集中打を浴びて4失点し、六回の先頭打者に本塁打されたところで降板した。「甲子園は雰囲気が違った。独特な空気があった」。試合後の取材では、表情を失っていた。
中学時代に軟式で全国大会優勝の実績がある。経験豊富で、自信があった。だから、「野球で緊張したことはない」という。「甲子園はいつも以上に力が出せる場所だと思っていた。でも、その場でいつものピッチングができなかったので、びっくりした」。自分を見失ったまま、憧れていたマウンドを降りた。
でも、下は向かない。「甲子園を経験できたチームは少ない。そこは感謝しているし、チームとしても大きい」。開会式などで見た周りの選手の体の大きさにも驚いた。「野球に必要な筋力を鍛えて、夏までに体を大きくしたい」。最後の夏へ。「絶対に帰ってくる。勝つための準備をして、別人になって戻ってきます」。負けたままでは終わらない決意がにじんだ。(大西史恭)