日本航空石川に敗れ、肩を落とす明徳の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、加藤諒撮影
(30日、選抜高校野球 日本航空石川3―1明徳義塾)
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明徳義塾の馬淵史郎監督(62)は敗戦後でも、率直に、丁寧に取材に応じる。
「今年のチームは自信があった。チャンスやと思ったんやがな」
初戦の2回戦は、逆転サヨナラ3点本塁打で中央学院(千葉)に勝利した。その5日後の3回戦で、まさか逆転サヨナラ3点本塁打を打たれるとは……。
エースの市川が5失点した2回戦は、4番谷合の一発で試合をひっくり返した。「今日は市川で勝つ試合やと思った。勝っときゃグーンと勢いもつく。打てん試合も、どっかで勝たなあかんからね」。勝ち上がれば準々決勝の相手は東海大相模(神奈川)。2試合連続で大勝している。「ええ流れで対戦できる。楽しみやったんやがね」
九回表の攻撃で1死満塁の好機を逃した。「スクイズのサインを打者が見逃した。そのあと、併殺打でしょ。いやな予感はあった」と言った後、「まあ、選手が見逃すようなサインを出す監督の責任や。監督ちゅうのは、ツラいんよ」とおどけた。
九回裏の逆転劇は、先頭打者に右前安打を打たれて始まった。「七回ぐらいから初球を狙われとったから、ボールから入れと指示したんやが。勝ちを焦ったんかなあ」。初球を痛打された。さらに次打者に四球を与える。「あれがダメ。バットを振らせれば打球が正面をつくこともあるんやから」
八回に相手の暴投で1点を先取したが、「こういう試合は一発で決まる。スライダーが抜けると危ないから気ぃつけえ」とバッテリーに注意していたという。3番原田への初球、そのスライダーが真ん中に入る。
「見事に打たれたね。3番、4番に(バットを)振れる子がおる。大したもんです」と、日本航空石川をたたえた。
「1球の怖さよ。(初戦で破った中央学院の)大谷君も1球の失投。市川も1球で、天国と地獄になるのよ。野球は27個目のアウトをとるまで分からん」
逆転サヨナラ弾で勝って逆転サヨナラ弾で負けた。
「なんと劇的な。自分の人生みたいや」
取材時間が終わると、「また出直します」と報道陣に頭を下げた。(編集委員・安藤嘉浩)