智弁学園―創成館 九回裏創成館1死二、三塁、打者平松の打球を中堅手左向が落球して三塁走者が生還する=加藤諒撮影
(30日、選抜高校野球 創成館2-1智弁学園)
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センターに浅い飛球があがる。九回1死二、三塁、1点を追う創成館の攻撃。智弁学園の中堅手左向(さこう)は、「(タッチアップを狙う三塁走者を)刺してやる」。勢いをつけて前へ。だが、視線の先に走者が入る。白球はグラブの先に当たり、芝生に落ちた。同点。試合は振り出しに戻った。
「勝ち急ぐな」。智弁の小坂監督は試合中、選手に言い続けた。主将で捕手の小口は「焦らんと、1個1個。気を抜くな」と声をかけた。だが、マウンドの伊原は「アウトを早く取りたかったので、投げ急いでしまった」。先頭の安打の後、ストライクをそろえ、バスターエンドランを決められた。左向も同じだ。「飛んでこいと思っていたんですけど……」
追う立場の創成館は、明るかった。九回の攻撃前、主将の峯が仲間を鼓舞する。「自分たちのペースで試合を運べている。絶対に勝てる」。負けているのにそう言えたのは、投手陣が粘っていたから。四回から救援した酒井が無失点でリズムを作ってきた。
追う側の勢いと、追われる側にかかる重圧。勝利を目前にした智弁は、それにのみこまれた。
1死満塁から、小飛球を遊ゴロ併殺にしてしのいだが、流れは変わらなかった。十回の攻撃は、三つのフライで簡単に終わった。
その裏、二つのアウトは左向の好捕でとった。最後の打球も中越えへ。「フェンスに登ってでも捕ってやる」。思いは届かず、サヨナラ本塁打に。「何が足りなかったのか、まだ分からない。これから探したい」と小口。九回を抑える難しさを痛感した春となった。(小俣勇貴)
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●小坂監督(学) 「九回を何とか切り抜けたのに、十回の攻撃で3人ともフライアウト。あそこで流れが止まった。伊原はよく投げた」