安倍政権が今国会の最重要法案としている働き方改革関連法案が6日、国会に提出された。柱の一つが、政権や経済界が求め続けてきた労働時間規制の緩和だ。かつての「ホワイトカラー・エグゼンプション」を衣替えした「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の国会提出に再びこぎ着けたが、野党は「残業代ゼロ制度」と批判しており、成立への道のりは険しい。
法案は労働基準法など8本の改正案を束ねたもので、労使双方に配慮した「ガラス細工」とも評されてきた。労働者側が求める残業時間の罰則付き上限規制などの規制強化と、高プロの新設という規制緩和が抱き合わせになっているからだ。非正社員の待遇改善を目指す「同一労働同一賃金」も柱の一つとなる。
高プロは専門職で年収が高い人を労働時間規制から外す。経済界は「従業員をより柔軟に働かせられる」として求めてきた制度だ。企業の経営効率が高まれば経済活性化につながるとして、政権も経済政策の一環として後押ししてきた。
2007年に第1次安倍政権はホワイトカラー・エグゼンプションとして導入を図った。だが、長時間労働を招くとの懸念が強まり、国会への提出自体を断念した。第2次安倍政権下の15年には、高プロの新設を含む労基法改正案が国会提出されたが、野党が「長時間労働を助長する」などと反対。2年以上審議されず廃案になった。
今回の法案は、安倍晋三首相が議長を務め、経団連や連合の労使トップが参加した「働き方改革実現会議」が、昨年3月にまとめた「実行計画」が元となった。実行計画には労働規制の強化と緩和の両方を盛り込み、労使双方を納得させようとした経緯がある。
ただ、高プロに並ぶ規制緩和策として法案に盛り込まれるはずだった裁量労働制の対象拡大は、根拠となる労働時間データが不適切だった問題で全面削除に追い込まれた。規制緩和への懸念が強まる中、野党は裁量労働制より規制緩和の度合いが強い高プロに批判を集中させて、徹底抗戦する構えだ。(村上晃一)