安倍政権が今国会の最重要法案としてきた働き方改革関連法が、29日の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。国民民主党、立憲民主党、共産党などは反対した。また、米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)の関連法も、参院本会議で与党などの賛成多数で成立した。
働き方改革関連法は、長時間労働を抑制するため、残業時間の罰則付き上限規制を設ける一方、野党が過労死を招きかねないと批判し続けた「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」も2019年4月から導入されることになる。
安倍晋三首相は今国会を「働き方改革国会」と位置づけ、「誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革する」と関連法の成立を訴えてきた。ただ、法案を検討する基礎になった労働時間のデータに問題が発覚し、提出が遅れた。森友・加計(かけ)学園問題などの影響で審議も停滞。6月20日までの当初の会期内に成立させられず、会期を7月22日まで延長。成立にこぎ着けた。
最大の焦点になったのは「高プロ」だった。年収1075万円以上の一部専門職について労働時間に関する保護から外されることから、働き過ぎにつながる懸念が繰り返し指摘された。政府は制度の導入理由に「働き手のニーズ」を掲げてきたが、実際には働く人の声を十分に聞いていなかったとして野党は厳しく追及した。
TPP11の関連法は、TPP11の発効で輸入物の価格低下で影響が出そうな農家へ補助金を支出することなどが盛り込まれている。
TPP11は6カ国が国内手続きを終えた60日後に発効する。日本の国内手続きは協定の承認と関連法の成立も必要で、協定は6月13日の参院本会議で承認されている。国内手続きを終えるのはメキシコに続き2カ国目になる見込みだ。
重要法案の成立を受け、政府・与党は今後、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案、参院選の定数を「6増」する公職選挙法改正案などの成立を目指す。