マリー・アントワネットがその音色を聴いたとされるストラディバリウス、通称「サン・ロレンツォ」(1718年製)。専属バイオリニストのジョバンニ・バッティスタ・ビオッティが所有していたという=東京ストラディヴァリウス フェスティバル2018実行委員会提供、Photographs(C)Jan R●(oに〈ウムラウト〉付き)hrmann
世界最高峰のバイオリンの代名詞「ストラディバリウス」の弦楽器がかつてない規模で集まり、演奏や展覧会でなどで楽しむフェスティバルが7~10月、東京都内で開かれる。主催者が今月、概要を発表した。バイオリン18丁のほか、希少なビオラ、チェロ、ギターが各1丁の計21丁、総額210億円(推定)に上るという。
楽器の売買や修復を手がける会社「日本ヴァイオリン」(東京都渋谷区)の中澤創太社長(33)が企画。21丁はすべてイタリアの楽器製作者アントニオ・ストラディバリ(1644~1737)の手によるもの。アントニオが製作し、現存するストラディバリウスは全世界で500~600丁とされ、これだけの数が一堂に会するのはアジアでは初。最高額はビオラで約35億円、チェロが約30億円。バイオリンで最も高価なのは美しい装飾のある通称「ロード」で、約20億円だという。
クラシック音楽界を盛り上げるため、認知度抜群の弦楽器の至宝を主役に据えたフェスを発案。5年にわたる交渉で、伊クレモナ市のバイオリン博物館をはじめ、スイスや英国、日本などの財団や教育機関、個人から協力を得て、各年代を代表する名器を集めた。
東京芸術大が特別協力する。この日の記者会見に出席した同大学長でバイオリニストの澤和樹さんが、1718年製のストラディバリウスで「タイスの瞑想(めいそう)曲」を奏でた。
「見た目にも音色にも近寄りがたい高貴さがあり、女王様のよう。自分の出している音というより、楽器そのものの持つ音のすばらしさを感じる」
中澤社長は「ストラディバリウスを知る人は多いが、高額だということしか認知されていない。演奏や展覧会、科学的なデータで魅力を多角的に伝えたい」と話した。
◇
「東京ストラディヴァリウス フェスティバル2018」の主な催し
「ストラディヴァリウス ソロイスツコンサート」7月1日午後2時、東京・赤坂のサントリーホール。バイオリンの三浦文彰、チェロの宮田大、東京芸術大と英国王立音楽院の合同オーケストラが出演し、計6丁のストラディバリウスを奏でる。
「マキシム・ベンゲーロフ ストラディバリウス リサイタル2018」10月1日午後7時、東京・赤坂のサントリーホール。2丁のストラディバリウスを演奏する。
「ストラディヴァリウス 300年目のキセキ展」10月9~15日、東京・六本木の森アーツセンターギャラリー。21丁のストラディバリウスが出品されるほか、ライブ&トークイベントなど。
問い合わせは03・6273・0497(実行委員会)。(安部美香子)