二種免許、受験資格緩和検討
バスやタクシーの運転手不足を背景に、警察庁は運転に必要な二種免許を現行制度より取得しやすくできないか、検討を始める。21歳以上で普通免許取得後「3年以上」とする受験資格を「1年以上」に短くすることが可能か調査と研究を進め、専門家から意見を聞く。「21歳以上」の引き下げも視野に入れる。
被害者学に詳しい大学教授や自動車ジャーナリスト、交通心理学の研究者ら8人の委員による有識者会議が、25日に初会合を開く。安全性を確保できる教習や試験について今年度末をめどに提言をまとめる。
二種免許は普通、大型ともに21歳以上で普通免許を取得後、3年以上たてば受験できる。自動車教習所の教習を修了すると「2年以上」に短くなる規定があるが、少子高齢化で人手不足に悩む業界から受験資格の緩和を要望されていた。
警察庁は政府が閣議決定した規制改革実施計画を受け、昨年度に普通二種免許の受験資格を調査。東京都内の教習所で、運転経験が1年以上2年未満の20代男女が技能教習を増やした教習を受け、現行の教習を受けた運転経験2年以上3年未満の20代男女の走行実験と比較した。
その結果、見通しの悪い交差点の走り方や進路変更などで、危険を予測したり避けたりする力を点数化したところ、運転技術に大きな差はなかったという。今年度は大型二種免許についても同様の実験などで客観的な数値を集め、新しい教習や試験の内容を検討する。
若手の確保に期待
運転手の高齢化に悩むタクシーとバス業界は若い人材の確保につながると期待する。
2015年に受験資格の緩和を警察庁に要望していた全国ハイヤー・タクシー連合会(千代田区)によると、17年6月現在で全国に約29万人いる運転手の平均年齢は59・4歳。担当者は「資格要件が壁になり、就職先として敬遠された。十分な安全措置を講じるのが前提だが、門戸が広がれば輸送力を強くできる」と話す。
国土交通省の統計では、14年度の路線バスの運転手は約8万3200人で、4年前から約3200人増えた。だが、日本バス協会(千代田区)によると、運転手の中心は40~50代。運転手になりたい高卒者を採用しても3年間は受験できず、志望者が不足しているという。
2年後の東京五輪・パラリンピックではバスの需要が高くなる。大会組織委員会の試算では、期間中に選手や大会役員などの移動に約2千台のバスを使う。都内の102社で組織する東京バス協会(渋谷区)によると、加盟社が所有する貸し切りバスは約1800台。担当者は「東京のバス会社だけで対応するのは難しい。受験資格の緩和が五輪に間に合えば、運転手の担い手が増える可能性がある」と話す。
一方、交通事故の被害者遺族は安全性の確保を願う。「北海道交通事故被害者の会」(札幌市)の前田敏章代表(68)は1995年に高校2年の長女(当時17歳)を亡くした。悲惨な事故を防ぐために社会全体で交通安全の意識を共有する必要があると考える。「バスもタクシーも乗客の命をあずかる仕事。運転経験や年齢の資格要件は慎重に考えるべきだ。安全運転の技術を確実に身につける仕組みを作らなければいけない」(小林太一)